サッカーをしている時の一之瀬くんは、何時もの一之瀬くんとは全く違う、まるで別人のようで、戸惑いさえ覚えたのは、数分も経っていない、たった今の事。格好付けるようにポーズを取ったり、ベタベタ引っ付いてくる(彼女でもないのに、)何時もの一之瀬くんと、全く雰囲気が違うのだ。とても真剣な表情、瞳からはサッカーに対する強くて熱い思いがひしひしと伝わってくる。
必死にボールを追いかけて、転んでも直ぐに立ち上がって走り出すその姿は、何時もの一之瀬くんを知っている人なら、きっと誰でも別人だと思うだろう。そう、言葉に表すなら、格好良い、といった所だ。
サッカーをしている一之瀬くんの姿には、不覚にもどきどきさせられてしまった。何よりもシュートを決めた時のあの笑顔に、ときめいてしまったのだ。何時も無駄に引っ付いて来て、正直欝陶しいとさえ思っていた相手に、こうして不覚にもどきどきさせられてしまっている。
それが何だか悔しいけれど、事実だから認めざるを得ない。格好良いと思ってしまったのも、必死にボールを追いかけるその姿に、暫時は息を飲むのも忘れてしまったくらいに見惚れてしまったのも、全て事実なのだから。
「なまえ!俺のシュート見てた!?」
「…っ、う、うん。見てた、よ…。」
満面の笑顔でこちらに走って来る一之瀬くんは、何時もと同じ雰囲気に戻っていたけれど、それでも胸の高鳴りは治まらず、今だにとくんとくんと音を発てている。一体何故なのだろうか。サッカーをしている一之瀬くんに一瞬ときめいただけの筈なのに。どうして、今も尚、心臓はこんなにも速く律動を続けているのだろう。
「ありがとう!なまえに見てて貰えるなんて、俺嬉しいよ!」
「あ…のさ、格好、よかった…よ。」
何を言っているのだろう私は。こんな事言うつもりなんて一欠けらも無かったのに。こんな恥ずかしい事、普段の私なら、到底口に出来る筈の無い言葉なのに。どうして、今そんな事を口走ってしまったのだろう。
「…っ!なまえ!」
「うわっ!な、何すんのよ!」
抱きしめられる事が、何時もなら欝陶しいとしか思わなかったのに、今は嬉しいだなんて思ってしまっている自分がいる。何だか今日の私は可笑しい。何時もなら拒絶しているのに、なのに何故大人しく抱きしめられている?何で顔が熱くなる?
謎が謎を生み、疑問が増え、自分が分からなくなっていく。
一体何なのだろう、心の底から競り上がってくるこの熱い感情は。
「なまえ!好きだよ!」
好き、その言葉に過剰に反応してしまった。好き…私は一之瀬くんの事が好きなのか?だとすれば、今私に起きた全ての事の辻妻が合う。きっと私は、一之瀬くんの事が好き、なのだ。だから胸の高鳴りが治まらなかったり、抱きしめられて嫌な気にならなかったのだ。
この感情の正体は、恋。そう知ってしまうと、自然と心が軽くなり、昂揚感が込み上げて来た。きっと私は鈍感なのだろう。直ぐにこの感情に気づく事が出来なかった。
「そっか…恋、だったんだ。」
「?どうしたのなまえ?」
「何でもないよ。」
やっとの事で気が付いたこの思い。不器用な私は上手く伝える事が出来ないかもしれないけれど、きっと伝える。いや、絶対に伝えるんだ。だから、勇気が言葉になるまで、待っていて欲しいと、心の底で、小さく願った。
consciousness
(いいいいい一之瀬くん!)(何なまえ?)(すっ、すすすすす好き、っです!)(なまえ!俺も好きだよ!)
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杏さまへ3000hitフリリク夢!
リクエストありがとうございました!
杏さまのみお持ち帰りOKです!
あわわ…
かっこよすぎる一之瀬くん!
あ、ありがとうございます!!
09/09/15 杏
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