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02 -金の魔術師-





頭が割れるかと思うほど、響く金属音が住宅街に谺した。
すると途端に砂埃が立ちこめ、辺りの視界が遮られてしまった。



「な、なんだッ?!」
「花火とかじゃあなさそうだな」



驚いて、綱吉は思わず腰を抜かして座り込み、珍しく山本は笑みを失っていた。
なんなんだ、またリボーンの仕業か。
綱吉の脳裏に浮かぶのは、ニヒルな笑みを浮かべて笑うあの赤ん坊。
ほんとに、勘弁してくれ。


見えない視界が段々と広がっていき、クリアに見えるようになってきた。
そんな時、黒い何かが綱吉の側を通り抜けた。
また何か起こったのかと、びくりとまた体を揺らした綱吉は、ゆっくり周囲を見渡し、何も異常が無かったからか、安堵の溜息を吐いた。



「あの、」


―――――立てますか?


安心して気を抜いていた綱吉は、突然かけられた声に驚き肩を上下に揺らした。
凛、と鈴がなるような心地よいソプラノが響いた。
声のしたほうに振り替えると、そこには絵に描いたように美しい女の子が腰が抜けて動けなくなっていた綱吉に、手を差し伸べていた。



「あ、…ありがとう」



思わず熱を持ってしまった顔を隠すかのように、俯き力を入れて漸く立ち上がった綱吉に、女の子は悲しそうに差し出した手をしまった。
綱吉は、手を握ることに羞恥を抱き躊躇したのだが、そんなことを知らない女の子は、ただ悲しそうに俯いた。


その様子を見た綱吉は、つられて顔を悲しそうに歪めたが、ふと思い出す。
今の衝撃は…



「あ、君、今なんか凄い音がしたけど」



大丈夫、と尋ねようとした綱吉は、またびくりと体を震わす。
ただならぬ―――――殺気を感じ、冷たいものが背中と体中を撫で回すように疼いた。



「おいツナ、大丈夫か?」
「え、…」



思わず俯いていた顔をあげると、そこにはあの女の子ではなく、心配そうな顔をした山本が居た。



さっきのは一体、なんだったんだろう。






山本が影になってる…





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