6:嫉妬






「あいつがどういう奴か分かってるのか?あいつらはホムンクルスで…」

「分かってる」

「未登録…俺達の所に来いよ。絶対、守るから」

「…それは出来ないわ」

前にも言った筈よ、と俯く。

エンヴィーは二人を見つめる。その瞳は一向に光を帯びない。


「あいつが…そう言ったのか?」

「え?」

「あいつがお前にそう言えって言ったのか」

「…エド」

それきりエドは口を噤んだ。



やまない風の音。
微かに掠めるのは雨の匂い。






「私だって、みんなと一緒にいたい…」

未登録はぽつんと言った。
いつの間にか彼女の目には涙が浮んでいた。


不意に、エンヴィーは耳を塞ぎたい衝動に駆られた。

いや、というよりはむしろ。





ぎりりと、噛み締めた自分の歯すらこのままへし折りたい様な、


この感じ。


深く凍てついて渦巻く感情。



「エドが、味方だって言ってくれてほんとに嬉しかった…ほんとだよ…」

「でも私、あの人達の言いなりになってエドとアルの邪魔してた。ずっと…、役に立ちたいと思ってたのに…っ」






何かが狂う。

あいつが喋るから。
あいつが笑ったから。







渦巻く感情が。






「錬金術だって、二人の役に立ちたいから、…だからずっと…」


よく晴れた日、
聴こえる筈の笑い声は奪われた。

血の海に沈む身体を掬う事も弔う事も叶わなかった。


与えられた場所に捕らわれた。






「あの日…私は…」








「エドとの約束があったから、……エドが居たから…ッ」









周りの音が、よく聞き取れない。








ああ、そうか。
そうだったのか。




錬金術を捨てなかったのも、
研究を続けたのも、



不自由の中で生きる事を選んだのも、







あの瞳が強くあるのは。









全部全部全部、


あいつの為だったのか。

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