6:嫉妬







息をつく暇も無く夢中で喋っていたら、急に目隠しをされたみたいに世界が回って。



自分が抱き締められているのに気づいた。


「…お前はそっち側の人間で、だから俺達と居られないのか?違うよな、脅されてるだけなんだろ?」

未登録に言い聞かせているのか自分を納得させようとしているのか。

エドは目の前の少女をきつく抱き締める。



「言ったろ?未登録があいつらと繋がってたって関係ねぇ。…俺は、そんな事より…」


「…、エド?」

背中に回された腕が、少し痛い。


「あいつが、お前の何なのか…それが頭から離れなくて」

表情は見えないながらも横目にエドを見やった。


「あの人は…」

自分の何でもない、と未登録はそう答えた。

嘘じゃない。現に彼は自分の友人でもなければ恋人でもない。




気紛れに、
遠くからこちらを眺めるだけの。



「だったらなんで、あんな…」

きっとエドはこの前の事を言ってるのだろう。
だけど、なんで彼があんな事をしたのか一番知りたがっているのは未登録自身だ。


「…多分、ああいう人なの。何を考えてるかなんて私にも分からない」

取り繕うように言って、未登録は薄く笑った。
なんとなく居心地が悪くて、早くこの話題から離れたかった。




「そんな簡単に…許すのかよ」

その低い声に驚いて彼を見上げた。
不意に、エドの手が未登録の両肩に触れて少し身体を離される。


「…エド、…ッ!」

顎を捕られ慌てて掠れた声を出したけど、遮る様に唇を合わせられて。
視界いっぱいに広がる鮮やかな金糸は眩し過ぎて、それは殊更頭の中を乱すばかりで。


「んう…っ!」

突き返しても腕を緩めてくれない。


エドはこんな事しない。
頭の隅でそう思うと、胸がずきんと痛んだ。



何もかもがまるで全然知らないものみたいで、酷く不安になった。




「…っ、や…ッ!」

一瞬の隙に思い切り突き飛ばした。
だけどうまく力が入らなかったのか、エドは少し後ろによろめいただけで。




「…ごめん…」

未登録は息を切らせ、ただそれだけ紡いで。


何がなんだか分からなくてエドを置き去りにしてその場から逃げてしまった。












「はぁ…はぁ…」


一つ角を曲がった所で未登録は立ち止まった。



突然の事に取り乱してしまった。
もっと、ちゃんとエドの話を聴けば良かったかもしれない。

エドは自分の話を黙って聴いてくれたのに。




「はぁ…、……」



戻らなくては。





そう思ったその時だった。






視界の隅に闇の気配がして、そちらを振り返った。



目の前の紫掛かった灰色の道を塞ぐように降り立った漆黒。

色味も無いのに他の何よりも深く冴えた彩。

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