6:嫉妬 朝から気分の優れない日だった。 その日の空は鈍い灰色で覆われ、 地上の冷たさに較べ、酷く生温かった。 「何処行くの」 その背中に訊いた。 「…エドとアルの所よ」 自室のドアを閉め、未登録は静かに廊下を歩いていく。 外出の理由なんて分かり切っているのに。 その日の俺もやっぱりおかしかった。 おチビさんの隣に居るあいつを、 あの顔を見てから何かが変わってしまった。 口うるさいおばはんの注意は絶えないし、俺自身自分の状態に業を煮やしていた。 何を始末したら、 この底知れない黒い感情は晴れるのか。 俺はあいつの跡をつけ、澱んだ空の下に広がる街に出た。 今までも必要とあればあいつと兄弟の監視や盗聴をした。 お父様への忠誠心なのか何なのか、その面倒さを大して厭わなかった。 それでも今の自分は、組織も仕事も関係なく動いている気がした。 [page select] [目次] site top▲ ×
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