0:Prologue 土砂降りの雨だった。 立ち込める霧の中、 臭いは途切れ、視界は一面の灰色だった。 辿り着いた場所には、 血の痕だけが残っていた。 「…くッ、…はは…っ…」 俺は笑った。 そういえば昔も、こんな風にあいつを探し回ったことがあると。 呑気に下らないことを思い出してると馬鹿みたいに懐かしくて、 笑いが込み上げて空回った。 「………」 雨がうるさい。 こんな虚しさを呼ぶ前に、 気づくべきだったんだろう。 浮かんだその名は呼ぶことも憚られて、 とても口には出せなかった。 もっと早く 気づくべきだったんだ。 お前の名前の重さに。 劣悪なこの籠の扉を お前が開く前に。 [page select] [目次] site top▲ ×
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