7:残酷な造り




「誰が化け物だって?」


そんな抑揚のない声が聞こえた。

長い指が背中から抜かれると痙攣した指から拳銃が抜け落ちる。
未登録もまたその手から解放され、固い地面に落とされた。


「ぐっ!うぅ…ッ!」

苦痛に悶えながら必死で銃を拾う男。
エンヴィーは足元の人間を見下ろして心底軽蔑したように顔を歪めた。
そして憎々しげに転がっていた金属質の廃材を手に取ると、地面を這う右手の甲に勢いよく突き刺した。


「ぎゃああああッ!!」

「あー、うるさい」

男は腹這いになりながら尚も左手で銃を取る。

狂ったように引かれた引き金。

一瞬痛みに揺らいだ藤納戸の瞳。
それが未登録の色褪せた世界で現実のものとして鮮烈で。



決死で放たれた弾丸はエンヴィーの肩を掠め、受けたその傷はすぐに再生して消えた。


青ざめる男の顔。
冷たく冴えるエンヴィーの瞳。


未登録は先程の男の言葉が彼の癇に障ったのだと悟った。



「……死になよ」



ぐしゃりと嫌な音を立て、男は事切れた。





「ったく…命令聞かないどころか死にかけてるし」

役立たずにも程がある、そう漏らした後にエンヴィーは横たわった男の頭を足蹴にした。
おずおずと立ち上がり、未登録は膝に食い込んだ小石を払う。
白い肌に僅かに血が滲んでひりひりと痛んだが、その現象すら彼女にとっては夢のようだった。

[ 31/177 ]

[*prev] [next#]

[page select]


[目次]

site top




×