7:残酷な造り 「誰が化け物だって?」 そんな抑揚のない声が聞こえた。 長い指が背中から抜かれると痙攣した指から拳銃が抜け落ちる。 未登録もまたその手から解放され、固い地面に落とされた。 「ぐっ!うぅ…ッ!」 苦痛に悶えながら必死で銃を拾う男。 エンヴィーは足元の人間を見下ろして心底軽蔑したように顔を歪めた。 そして憎々しげに転がっていた金属質の廃材を手に取ると、地面を這う右手の甲に勢いよく突き刺した。 「ぎゃああああッ!!」 「あー、うるさい」 男は腹這いになりながら尚も左手で銃を取る。 狂ったように引かれた引き金。 一瞬痛みに揺らいだ藤納戸の瞳。 それが未登録の色褪せた世界で現実のものとして鮮烈で。 決死で放たれた弾丸はエンヴィーの肩を掠め、受けたその傷はすぐに再生して消えた。 青ざめる男の顔。 冷たく冴えるエンヴィーの瞳。 未登録は先程の男の言葉が彼の癇に障ったのだと悟った。 「……死になよ」 ぐしゃりと嫌な音を立て、男は事切れた。 「ったく…命令聞かないどころか死にかけてるし」 役立たずにも程がある、そう漏らした後にエンヴィーは横たわった男の頭を足蹴にした。 おずおずと立ち上がり、未登録は膝に食い込んだ小石を払う。 白い肌に僅かに血が滲んでひりひりと痛んだが、その現象すら彼女にとっては夢のようだった。 [page select] [目次] site top▲ ×
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