7:残酷な造り

「用も済んだし、さっさと帰るよ」

そう言い終わるか否か。

エンヴィーは突然未登録の腕を引き、すぐ側の廃虚に身を潜めた。

「んっ、痛…」

「…静かにしな」

男に落とされた時に打ちつけた箇所が、ずきんと痛む。
誰か来たのかと思い未登録は身を乗り出そうとした。

しかし掴まれた手を下に引かれて引き寄せられて。
わけも分からずよろけながらエンヴィーの隣に屈み込んだ。





隙間風に揺れる漆黒の髪。


闇の中で、
紫群青のような彩を見せる瞳。


少し甘い彼の匂い。


咽せかえる、血の香り。




酷い動悸に襲われて。
繋がれた手の温度差が変わらないことを祈った。






目を凝らすと、廃材の隙間から僅かな光が差し、見慣れた二人組の姿が見えた。
男達と落ち合う筈だったエドとアルがようやくあの店からこの路地へ辿り着いたのだ。

すぐに此処から立ち去ってしまえばいいのに、エンヴィーが身を隠したのが未登録にはなんとなく意外だった。



「兄さん、この人も死んでる」

「何処のどいつがこんなこと…やっと見つけた手掛かりが…」

放置された男の死体に、二人は愕然としていた。
監視し始めて気づいたが、エド達は旅をしながら何かを探しているようだった。
肩を落とす二人を見て彼は薄く笑う。


「目の前の人間の死を悼みもせず落胆するなんてね…」


エドを見るこの目。
人間を見る瞳はこんなにも冷たい。


横顔を食い入るように見つめていた未登録。
その視線は、やがて赤く染まったエンヴィーの肩に注がれた。


肌を遍く覆う、
夥しい紅。


彼が撃たれた時は目を逸らしたのに、何故か今度は目が離せなかった。

変わらないのは胸を掻く痛みだけ。


「……」

過ぎた再生は、身体の傷を跡形なく消してしまう。

それでも肩の表面についた血は目に見えるものとして残り、出血があったことを物語っていた。

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