6:瞳に映るもの

「…相変わらず駄目だねぇ」

エンヴィーは至極愉しそうに怯える未登録の顔を覗き込む。

その時、突如銃声と共に二人の間を弾丸が横切った。

「…っ!」

未登録は反射的にその身を強張らせる。


「何処のどいつだか知らねぇがさっさと引いた方が身の為だぜ!?」

銃を向けて勝ち誇った表情で笑う男に、エンヴィーは面倒臭そうに顔を向けた。



「やれやれ、めでたい頭してるね。それで威嚇してるつもりなの?」




「―――!!糞がっ!死ね!!」











ゆっくりと確実に、
その身体を撃ち抜く弾丸。







「…っ、…あ」








未登録は胸を劈くような重い痛みを感じた。


自分の掠れた声だけが無音の世界で脳に響く。



穴の開いたエンヴィーの身体から飛び散る血。




その光景から、

目を逸らした。









パキ…パキパキ、パキン。

沈黙の中。
やがて再生に伴う奇怪な音が耳に届く。


男達はその現象に目を疑った。



「これでも一応痛覚あるんだよね…」


未登録は座り込んだまま、はっとした。


「さあ、どいつから殺してやろうか?」


「ひッ…、ひぃい!!」

口元の血を舐め取り、薄く笑うエンヴィーは妖艶そのもので。
得体の知れない相手を前に男達は一目散に逃げ出した。

路地の別れ道を蜘蛛の子を散らすように走り去るその姿に、エンヴィーはきょとんと目を丸くした。



「あら〜、面倒なことになったな」

「……」

いつもの調子で戯けているエンヴィーを未登録は呆然と見上げる。


「しょうがない。あっちに一人行ったからお前はそいつ見つけて殺してきな」

「…え…」

「え、じゃない。はいだろ。ククッ…ちゃんと殺せよ〜?」

「っ…!」

わざと逃がしたのだろうか。
そんなことを思いながら未登録は細長い白壁の裏路地を見やる。



後を振り返った時にはエンヴィーはもう其処にいなかった。



「……」


静まった辺りには血痕と死体だけが残って。






未登録は殺せる筈もないのに、男の跡を追った。

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