6:瞳に映るもの



別れと引き替えに、

少女が得たのは深い闇の道。



とても孤独な檻。


でも此処には、
未だ見ぬ何かがある。



ただ、誰もそれに



気づいていないだけで。












「ドクターが逃げた?」


「ええ。しかも研究資料を持ち出してね」

「やってくれるね。で?どうすんの?」

小さな部屋の中で静かに青年の声が響く。

「泳がせておくわ。大して差し支えはないし此処での事も漏らさないだろうから」

「ははッそりゃ賢者の石造ってましたなんて口が裂けても言えないだろうねぇ」

「マルコーはいいとしても少し人員を増やそうと思うの。その間に貴方にはこいつらを始末して欲しいのよ」

そう言って写真を見せるラスト。
其処には複数の大柄な男が写っていた。


「鋼のぼうやと接触してる可能性があってね、余計な入れ知恵されちゃ困るのよ」

「ふうん。…俺は構わないけど?」

人間集めよりこっちの方が面白味がある。
それにあいつを連れていけば少しは楽しめるだろう。
エンヴィーはそんなことを思った。



「あの……」

その時、ふいに別の声が混じった。

二人は会話を中断し入り口を見やる。
部屋の主である少女が帰ってきたのだ。

「お邪魔してるわ。未登録」

ラストとエンヴィーが居たのは未登録の部屋。
最近エンヴィーがこの部屋を休憩室代わりにして寛いでいる為、ラストはわざわざ此処まで足を運んだらしい。


「いいとこに来たね。明日から2、3日外に出してやるよ」

「えっ」

「エンヴィーまさか貴方連れていくつもりなの?」

「いいじゃん、おチビは一応こいつの担当だし」

エンヴィーは未登録のベッドに寝転がったまま言った。



「俺と行きたいよね?」

「……」

看病してくれたことは感謝している。
でもあえて一緒に居たいわけがない。
エンヴィーが未登録を連れていく理由なんてひとつだから。


どうせただの暇潰しだ。


「なんとか言えよ」

「……」

「そ、じゃあお前はグラトニーと留守番してろ」

「ッ!!い、行きたいですっ」

「でしょ〜?」

満足げに笑う少年と対照的に一気に憂鬱になる未登録。
それでも例の男に食べられるよりマシだと思うしかない。


「…足手纏いになるわよ」

「同感だね。まあいざとなったら盾にでもなってもらおうかな」


首を傾げて笑うエンヴィー。


やりかねないと蒼白する未登録。



呆れて部屋を去るラスト。






かくして、
二人はターゲットのいる街へ赴いた。

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