4:苛立ち



「随分と気に入ってるようね」

移動中、ラストは突然に口を開いた。
二つの影が朧な月明かりの中で動く。


「は?ああ。まあね…ちょっと生意気だから骨の数本折ってやろうかと思うけど?」

にっこり笑ってみせるエンヴィーに、これだから困るのよと彼女が呟く。


「手荒な真似はしないで頂戴。使い物にならなくなったら困るわ」

「あははっそれは元からでしょ?」

「言ったでしょう、あの子の錬金術は人柱候補レベルだと」

「…そうだったね。早い話五体揃ってりゃいいんだろ?」

「まあ…そうよ」

「じゃあさ、取り扱いに気をつける代わりに俺にガキの世話させてよ」

意外な申し出に眉を顰めるラスト。

「どういう風の吹き回し?」

「今思ったけどあいつ手懐けてみるのも悪くないよね…」

脅すだけじゃ飽きるしと口元を歪めて笑う身内に、ラストはふと弱々しい月を見上げた。





「…本当に、幸の薄いお嬢ちゃんね…」










「けほっ…う…何もあんな飲ませ方しなくたって……」

その頃、未登録は一人真っ暗な廊下を歩いていた。
深夜の廊下は一切の光源がなく、時折差し込む月明かりだけが足元を照らしてくれていた。

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