3:深い夢

俺は無言でずかずかと部屋に入り、ベッドの前まで来ると、ガキの被っている布団を剥ぎ取った。

「あッ!?やだッ!!」

透かさずベッドの端に逃げるガキを捕まえ、頭を掴み上を向かせる。

「っ!やッ…ケホッ…いやだ!放して!!」

「煩い黙れ」

口に薬と水とを含み、じたばた暴れるガキを捩じ臥せ口を塞いだ。

「ンぅッ!んン―ッ!!」

どうにか押し退けようと抗うガキの口を舌で抉じ開け、液体を一気に流し込む。


「!」


熱い。


俺は口内の異様な熱さに顔を顰め、この期に及んでまだ粘っているガキの髪を引っ張り、早くしろと促す。

「ッ…!」



…ゴクンッ…。


飲むまで解放されないと諦めたのか、ようやくガキは喉を鳴らし薬を体内へ受け入れた。
その後、全部飲んだのを確認して口を離す。


まだ口の中でムカつく味がする…。


「うッ…ゴホッ…ゲホゲホッ…!」

「…吐き出したら殺すよ?」

咽せるガキを睨んで水の残ったグラスを渡すと、涙目になりながらも怒りの宿った瞳で睨み返してきた。

「はあ…ほんっと生意気だねぇ」

瞬時に何処かの誰かさんを思い出す。

何にも屈しようとしない、何処までも頑なその眼光。
この手で再起不能にしてやりたくなる瞳。


「…お前みたいな人間が一番甚振り甲斐があるよ…」

静かにそう言うと、不愉快さが顔に出ていたのか、ガキの肩がびくりと震えた。




「エンヴィー」

突如、ドアの方からとっくの昔に聞き飽きた声が響く。




…ああ、もう終わりか。


「あらあら咳込んでるじゃない」

「いいから。仕事行くんでしょ」

俺は咳き込むガキに感謝しろと吐き捨て、そのまま踵を返した。




廊下に出た後も、




僅かにガキの咳が耳に届いた。

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