4:苛立ち

どのくらい、熱があるのだろう。

苦労して見つけた容器が随分重く感じる。
身体はかなり辛いけど、水道まで後少しだ。

「っ…こほ」

苦しい。
でもこれで解熱の為の水が手に入る。
本来ならば氷のうが欲しいところだ。
だけど氷は錬成しなければ手に入らない。

だったら要らない。


それが未登録の出した答えだった。


未登録は暗闇の中に浮かぶ自分の指を眺めた。
一瞬浮かんだ父母の笑顔は、すぐに最期の姿に変わっていく。




「うっ…こほこほっ」

地面に容器を落とし、未登録はそのまま廊下に倒れた。
身体が動かない。



本当に後少しなのに。
このまま衰弱したら処分されるだろうか…。

助けを呼びたい。だけど呼べる名前もない。此処には誰も居ない。





ヒタッ…ヒタッ…。

「!」

その時、廊下の先から足音が聞こえた。














「くそっ…!あのガキ何処行きやがった!!」

「こんな時間に部屋に居ないなんて…逃げたのかしら」

「その時は始末するって言ってある…」

俺は苛立ちを逃がす様に言った。
こんな事ならやはり鍵を掛けておくべきだった。

「とにかく探してみましょう。これだけ広いのだから簡単には出られないわ」

確かに焦る必要はない。
外に逃げたとしてもあの身体で遠くへは行けない。
焦る必要は…。


いや、何か見落としている気がする。

だが何を?
その時、脳裏にある光景がよぎった。



「…ラスト」

「何?」



「グラトニーは?」




未登録は倒れたまま闇に目を凝らす。



ヒタッ…ヒタッ…。



見据えた闇の先に誰かが立っていた。

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