3:深い夢

「…要らない」

ガキはぽつりと言った。

「なら捨てるよ?」

「……」


意地でも飲まない気らしい。
ラストとやり合っただけあってほんといい度胸してるよ。




「あっそ、じゃ勝手に苦しめ」

そう言ってエンヴィーは未登録の部屋のドアを閉めた。



「…薬が無くたって…えっと何か頭を冷やす物を…」

風邪薬が症状を軽くするだけの物と知っていた未登録は、人の持つ自然治癒力で病気を治すつもりだったのだ。



だがあまりに必要な物が揃わず、精神的な疲労と栄養失調も重なり悪化の一途を辿った…。









二日後。


「お父様に聞いたんだけど、長引くと他の病気を併発したりするそうよ」

「へえ〜そりゃいいね」

「ほんとえげつないわね」

「あんな生意気な態度取ったんだ。調子に乗ったガキには良い仕置きだろ」

「じゃあ放っておくつもりなの?」

「当たり前。あいつが命乞いしてきたら考えてやるよ」

ラストは溜め息を吐き、真剣な顔をした。


「…拗らすと肺炎に掛かる恐れがあるんですって」

「? 何それ」

訝しむエンヴィー。


「さあ…でもかなり深刻な病気らしいわよ」









――バンッ!!

「……?…」

突然の物音に未登録は朦朧としながら布団から顔を出した。
何かと思えば露出狂の性格破綻者がドアを豪快に開け放っている。
別段驚きはしない。

この人のことだ、どうせ病気だろうが働けとか言うのだろう。


「ケホケホッ、入って…来な、いで」

「今すぐ解熱剤飲め」

「!?」

そう言い、何故か手に薬と水を持っている。

「いっ要らない!」

未登録は慌てて布団を被り背を向けた。


なんのつもりか知らないが、この人の世話にだけはなりたくない。

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