2:浅い眠り

以前、未登録はリゼンブールに住んでいた。
エドとは幼馴染みであり、錬金術仲間だった。


「ねえ、エドとアルは錬金術で何するつもりなの?」

未登録はよく二人に尋ねたけれど教えてくれなかった。
兄弟二人だけの秘密。
でも彼女には、なんとなくは分かっていた。
二人はお母さんを錬成するつもりなのだと。
理由はよく分からなくても、人体錬成が禁忌であることは知っていた。
それでも、二人の助けになれたらと思っていた。




そんなある時、二人が修行に出ることになった。



「未登録、泣かないで?」

「だって…私、何もしてあげられない…」

未登録は自分の無力さを痛いほど知っていた。
それでも何かしたかった。
二人の事が大好きだったからだ。


「…お前は何もしなくていいんだよ!」

「!」

「ちょっと兄さん」

エドの言葉に、しゅんとなる未登録。

「お前はただ居てくれれば…そんで笑ってりゃいいんだよ…」

それはきっとエドの素直な気持ちだったのに、


「〜っ!そんなバカみたいなのヤダ〜ッ!」

修行じゃ一緒にも居られないと未登録は興奮して納得しなかった。

「ったく…お前ほんとガキだなぁ。じゃあ…もし俺とアルじゃどうにもなんなかったら…そん時は力借りるよ」

「ほんと…?」

「ああ、だからそれまでちゃんと腕磨いとけ」

「…うん」


それはエドがくれたおまけのような子供の約束だった。


暫くして二人が修行から帰って来た頃、親の都合でリゼンブールを離れることになった未登録は、引っ越しの準備に追われそれを知らなかった。
引っ越しの日が近付いてからエド達の帰郷を知り、二人の家を訪ねた。



けれど、家は留守だった。

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