小説 | ナノ

▽ 7


 軽く休憩を取ったあと、「店番は俺が代わるよ」というトレイズの言葉に甘え、俺はライゼをつれて奥のリビングへと引っ込んだ。
「そういえば、戻ってくるの結構遅かったな。何かあったのか?」
 ソファを軽く勧めながら聞くと、素直にそこに座ったライゼは、頷いて困ったように眉を寄せた。
「うん。色々説明しなきゃいけないことがあったのと、あと、剣が」
「剣?」
 言われて腰に目をやれば、出て行く時は下げていた剣が、今はなくなっているのに気がついた。
「さっきの戦いで、刀身にヒビが入っちゃって。鍛冶屋に寄って預けてきたの。それで、少し遅くなっちゃった」
「なるほどな……。で、戻ってきたということは、結局宿は取れなかったのか」
 そう言うと、ライゼはますます眉に皺を寄せる。
「門前払い食らっちゃった。これから忙しくなるし、食料もそんなにないからって」
「そうか。まあ、宿屋がダメなら泊めるって言ったしな。」
「えっと、さっきは言いそびれたけど、迷惑だったら私野宿でもいいよ?」
「いや、流石に女性に外で寝ろとは言わないよ。外は魔物も出るし、危険だ」
「む、これでも、首都からここまで野宿しながら来たんだよ。魔物ハンターはすごいんだからね!」
「その結果行き倒れていたじゃないか」
 途端、しゅんとライゼの羽根がしおれた。
「それはそうだけど……お腹がすいてたからだもん。腹が減っては戦はできないんだよ……」
 なにやらぶつぶつと言い訳を呟き始めたので、少し言い過ぎたか、と反省する。
「まあ、部屋貸すくらいならそんなに負担でもない。トレイズもよく泊まってくし。最も客間なんて立派なものはうちにはないから、このリビングで寝てもらうことになるが」
「うん……お世話になります……」
「このリビングは好きに使ってくれ。あと、地下室には小さいけど書庫がある。もしかしたらヘクセに関する文献もあるかもしれない。そっちも好きに使ってくれて構わない」
「書庫?」
 へこんでいたはずのライゼがぱっと顔を上げた。
「それは助かるな。首都でも何冊かヘクセに関する本は読んできたんだけど、あんまり情報がなくて困ってたんだ」
「役に立てば嬉しいよ」
 と、そこまで説明したところで、大きなあくびが一つ口を突いて出た。そういえば、昨日は夜通し実験にかかりっきりで、一睡もしてない。そのことを自覚すると同時に、急激な眠気が襲ってくる。
「悪いけど、先に俺は仮眠をとらせてもらう。何もお構いができなくて悪いが……」
「ううん、気にしないで。せっかくだし、この部屋の掃除でもしながら待ってる」
 その言葉にうなずいて、ふらふらと自室へと向かう。ベッドに倒れこんだとたん、俺はものすごい勢いで眠りへと落ちていった。
 ライゼがまったくと言っていいほど片付けができないことを知るのは、それから三時間後のことである。

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