小説 | ナノ


▽ 愛すべきガラクタたちへ


ホラゲ企画の世界観練りにSS



「この世界にはさ、ガラクタがおっこちてくるんだ」
跳ねるように歩きながら、ウサギ頭の青年は言う。
「いらなくなったおもちゃや道具なんかがね。お嬢ちゃんも落っこちてきたってんなら、きっとあんたも誰かに捨てられたのさ」
その言葉に、アリスはぼんやりと自分の手を見つめた。捨てられた。そうだっただろうか。ここに来る以前のことを思いだそうとしても、頭にもやがかかったやようでどうにもはっきりしない。ただ、砂を掴み取ろうとするような、疲労感だけが残った。
「私が誰かに捨てられたんだとして」
手を下ろしながらアリスは問う。
「捨てられる前、私は一体誰のものだったんだろう」
「どうだろうな」
わからないというよりは、興味が無いとでも言いたげな口調だった。
「でも、あなたも誰かに捨てられたからここにいるんでしょう。あなたの時は、どうだったの?」
その言葉に、青年はピタリと立ち止まり、振り向く。感情の無い、無機質な着ぐるみの顔が、じっとアリスを見つめていた。
「さてな」
しばらくしてから、うなるように青年は言った。
「そんなどうでもいいこと、とっくに忘れちまったよ」

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