薄暗くて見にくい。少し目が疲れ、明るすぎるPC画面から目を離す。今の所は日記というだけあって、些細な日常を摘むような話ばかりで、これといった情報は見受けられない。あえて言葉にするとしたら、静かに堅実に論理と合理性を追求する研究者であった彼女も、自己の感情経験を大切にしていたということだろうか。

「ツォンさん、どうですか?なんかありました?」
「...いや、まだ特にはないな」

後方でルードと共に、見つけた金庫をどうにか開けようとしていたレノの声に応え、もう一度画面を見ようとした時、外から扉を軽く叩く音が。

「マニ・アマリアです。失礼しても?」

反射的にノック音に構えたが、落ち着きのある聞きなれた部下の声にふと息を吐き出して警戒を解く。

「入れ...どうした?」
「いえ、なかなか戻られないのでこちらの進捗を伺いに。いかがですか?」
「見ての通りだ」
「...収穫はなし、と。まあ、あれから年月も経ってますからね」

苦笑をはらんだマニの声音に、副社長がそれで納得するかとため息を吐き出した。元は一般職員の内勤中心のオペレーターとはいえ、タークスに入って自分たちと同じく長く生き残っている彼女だ。自身も付き合いが長い副社長を思い浮かべたのだろう。マニもまた、確かに、とぼやいた。

「...しかし、回収されたという話の博士の身体もいまだ手がかりすら掴めませんし...本当のところ、どうなのか」
「...真実にしろ、虚報にしろ、明らかにするのが我々に与えられた任務だ。お前は引き続き、エヴァ女史の身体がどうなったか調査してくれ」
「了解しました...失礼します。レノ、ルード、しっかり主任のサポート頼むわよ」
「...了解」
「マニ、お前こそ調査の方頼むぞ、と」
「全力は尽くすわ」

ひらりと片手を振って扉の外に消えるマニの背中から視線を外し、再び調査を始めるべくPC画面を見直した。


end
閑話:調査員達の話
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