「アンジールのバスターソードはいつも綺麗だね?」

任務から帰ってきても、全く使用感がない彼のトレードマークとも言える大剣を指してみた。神羅ビルで何年かぶりに再会した幼馴染み、アンジールの背中で鈍く輝く大剣バスターソードは逞しく男らしくなった彼によく似合っている。
だが、いつまでも新品同然のまま輝く武器には疑問が募っていたのだ。だからなにとなしに聞いてみれば、これは実戦で使ってないんだという答えが、優しい笑みと共に返ってきた。

「…使う気はないんだ?」
「ああ、父が俺に遺した誇りだからな」
「そっか…そういうの大切にするの、アンジールらしいね」

家族もだけれど、誇りとか夢とかそういったもの。
アンジールは大切なものを、全部背負って歩いていく。大変だろうに、昔から変わらないからか平然とやってみせる。それが幼馴染として誇り高い反面、少しだけ心配にもなるの。

「…アンジール、」
「なんだ?エヴァ」
「あんまりたくさん背負いこみすぎて、無茶しないでね?」
「わかっている…お前に心配はかけるのは、ジェネシスだけで充分だしな?」
「!も、もう…そういうことだからじゃないからね?」

ジェネシスへの私の気持ちを一番知っているからって、そんな風につつかなくていいのに。意味ありげに笑って大きな手で頭を撫でてくるアンジールの言いたいことに気づき、気恥ずかしさを感じて思わず頬を膨らませた。

「私はジェネシスがとかじゃなくて、幼馴染みとしてアンジールのことを心配して...」
「ああ、分かってる。お前はそういうやつだからな、エヴァ」

だから、お前を泣かせるようなことはしない。
まるで何かに誓うように、ゆっくりと静かに口に出すアンジールは、やっぱり誇り高くて、優しいのだと思う。

「(アンジールは、絵本に出てくる騎士みたい)」

いつまでも彼の誇りの証が、その背中で輝き続けたら、なんて素敵だろう。
力強くも暖かい輝きに、目を細めた。


end
誇りの証
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