ソルジャーフロアのソファの位置は開放的すぎて落ち着かない。座る感覚に不満を覚えつつ、武具にマテリアを嵌めては取り出して、次の遠征につけていく最良の組み合わせを考える。
ソルジャークラス1stになって、久しぶりに組み合わせなど考えるからか、非常に悩ましい。
普段の俺ならば、普段から使う決まったマテリアがあればなにも問題はないが、しばらくはそういう訳にはいかなくなったのだ。
だが、それもこれもマテリア研究に最近熱心なあいつの望みならば、考えることも魔力を浪費することも、なんの苦でもない。喜ぶ顔を想像して、思わず口角があがる自分の口元を覆った時、ジェネシス、と俺の名を呼ぶ相棒の声が後ろから聞こえた。

「...少しいいか?」
「アンジール、どうした?」
「その箱に入った大量のマテリアはなんだ?」

俺の横に置いておいた箱を指していぶかしげに問うアンジールに、深く息を吐き出す。
なんだ、だって?決まっているだろ。

「次の遠征で育成するためだ」
「お前が...マテリアを育成?確かにお前は魔法特化タイプだが、使うマテリアは、大体きまってるだろう......特にぜんたいかなんて、回復魔法もかけないお前がほぼ使うことないだろ」
「回復魔法くらい使う」
「俺との任務の時に使われたことないが...」
「自分にしか使わないからな」
「...そうだな。お前はそういうやつだな」

何故そこでアンジールがため息を吐き出すのか。幼なじみとはいえ失礼じゃないか?

「...回復魔法の話はとにかく、なんで育成なんか始めたんだ」
「...エヴァが...」
「エヴァが?」
「最近、研究用にいくつかマテリアが欲しいんだと言っていたから、順番に育成して渡そうと思ってな」

そうでもなければ、俺がわざわざ使いもしないマテリアの育成なんて俺がするはずもない。他ならないエヴァを喜ばせるためだから、全力を尽くす。

「...なるほどな。それでか......謎がとけた」
「謎だって?そんな大層な...」
「ソルジャー内でも随一の魔力の持ち主が、いきなり大量のマテリアを買い込んだら大層な噂になるんだ」

社内が何をする気だとざわついていた。
そういうアンジールの言葉に、暇な社員ばかりかと心底思う。俺がマテリアをどう購入しようが気にされる言われはない。
というか噂されたら、エヴァに勘づかれるという最も恥ずかしい展開になるかもしれないだろ。

「エヴァが社内の噂に興味を示さないタイプで良かったな」
「...アンジール、お前なんで俺が考えてることわかるんだ」
「お前、昔からあいつのことを考えてる時はLOVELESS朗読してる時よりわかりやすくなるからな」

...さすがは俺の長年の相棒というわけか。

「お前にはバレても仕方ないが、エヴァには言うなよ。何でもないように渡す計画なんだ」
「俺からはなにも言わんが、少しは素直にエヴァのためだと本人に言わないと一向に伝わらないぞ」
「そんな好きになってくれと言わんばかりの恩着せがましいことが言えるか!」

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君が喜ぶ、そのために。
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