それからやっぱりキセキは僕に気づかなかった。

当たり前だ。そう仕向けていたのだから。


そうだ。これでいいんだ。



「いい、はずなのに…」



何でこんなに胸が痛むんだろう?




わかってる。期待してたんだね。

心のどこかで僕は、まだ期待してたんだ。


キセキはまた僕を必要としてくれる。


そう、期待してたんだ。

キセキならきっと見つけてくれるって、信じていたんだね。


「馬鹿だなぁ、僕は」


分かっていたじゃないか、僕なんかいらないくらい、光が強くなっていたことに。

最初から分かっていたじゃないか。




「分かっていたのに、最初から最後まで馬鹿正直に信じて馬鹿みたいだ」



"どれだけ努力しても、天才にはかなわない。"

そして、僕はそっと目を閉じて、自嘲気味に笑った。


「はっ、本当に馬鹿だな。お前は」


「……………どちらさまですか?」



僕が感傷に浸っていると、いつの間にかそばには不思議な眉をした知らない青年が立っていた。





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