(リーマスと勉強中)


「ミョウジとリーマスって付き合ってるのかい?」


図書室で肩を並べて勉強していた私たちに、ワクワクを微塵も隠そうとせず身を乗り出したポッターが問いかけた。
魔法薬学のレポート(難易度AAA!)を、あーでもないこーでもない、と悩みながら作成していた私たちは、突然の質問に固まったあと、ボッ!と音がしそうなほど顔を赤く染めた。


「ななななな何言ってんのバカじゃないのポッター!」
「そこのグリフィンドール生、うるさいですよ!」

ピシャリと飛んできたマダム・ピンスの注意に、わなわなと震える口元を押さえた。
心を落ち着かせるため深呼吸を繰り返す私の隣で、リーマスは赤い頬をかきながら困った顔をした。

「突然なんだい、ジェームズ」
「いやあ、僕はリーマスとミョウジが付き合っていることに2ガリオンかけたんだ!」
「くっだらない」

今度は大声にならないよう気をつけながら悪態をついた。賭けの相手は聞かなくてもわかる、ブラックだろう。

「君たちよく二人で勉強してるし、授業でもよくペア組んでるし、とにかく仲が良いようだからね!で、どうなんだい?」
「残念ながらハズレだよ」

リーマスは苦笑して肩を竦めた。ポッターはつまらなそうに口を尖らせ、溜め息をつく。

「なーんだ、シリウスの勝ちか。ミョウジがそんな色っぽいことになるわけがないってのは本当だったな」
「…ちょっと!どういうもががっ」
「ジェームズ、そういえばエバンズがスラグホーン先生の手伝いをしていたよ。君も行ってきたら?」

ジェームズはシャキンと立ち上がると、飛ぶように図書室を出て行った。リーマスはその姿が見えなくなるまで見送っていたが、私はそれどころではない。口元を覆うリーマスの手の平に爆発しそうなほど顔が熱く、心臓がうるさく、体が硬直し動けない。やけに大人しい私を気にしたのだろう、リーマスが手を離さないまま顔を覗き込むから、もうキャパシティを超え過ぎていっそ泣きそうだ。

「…もう大声出さない?」

問い掛けに必死でこくこくと頷けば、すぐに離してくれると思ったのにそんなこともなく、リーマスは何か考える仕草を見せながら周囲を伺った。
先ほど注意を飛ばしたマダム・ピンスの姿も今はなく、生徒たちもこのスペースには居なかった。

「…はい、もういいよ」
「………あ、あの…」
「…ん?」
「これは…一体…」

口元から離れた手の平は、羽ペンに戻るわけでもなく、私の右肩を通って左肩へと到達していた。つまり、片腕で、だ…抱きしめられて、いる。
いや力が入っているわけではないし、ただ腕を置いているという表現が正しいのかもしれない。しかし密着した腕や背中からはリーマスの体温が伝わり、心なしか速い鼓動も聞こえるようで、ジェームズにあんなことを言われたばかりの私には意識するのに十分である。

何も喋らない、動かないリーマスが、少しだけ腕に力をこめた気がして、ただ真っ赤な顔を俯かせることしかできなかった。

「…残念ながら、の意味、わかってないでしょ」
「えっ、?な、なにが?」

突然呟いたその声は小さかったけど、密着した私の耳にはすぐに届いた。彼の吐く言葉に揺れる髪の毛がくすぐったい。
わたしが疑問を返すと、パッと腕を離し、机に広がる教科書たちを片付けて立ち上がる。

「今日はここまで!」なんて先生みたいな言葉を残して去って行った彼だけど、そのライトブラウンの髪からのぞいた耳は、真っ赤に染まっていた。



残念ながら、わかってしまいました



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