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※シリーズについて補足※

疑い【マダオ三蔵シリーズ】2014/10
2014/12/01 12:58

「三蔵、そこに座って」
「は?」
「いいから」

悟空に指定された椅子へしぶしぶ座る。すると、悟空は音もなく何処からか取り出した色とりどりの名刺を三蔵の目の前のテーブルへとブチまけた。
その数ざっと三十数枚。
まぎれもなく悟浄に誘われて酒目当てについて行ったキャバクラで貰ったものだった。
しかも、なまじ三蔵の外見がいいだけに、彼女らはこぞって本気名刺ーーーー所謂ケータイ番号やアドレスやラインIDなどを書いた名刺を押し付けて来たのだ。

「何で浮気の証拠とか自分で処分しないかなぁ?ねぇ?」
「浮気じゃねぇ。俺は要らねぇっつって断ったんだよ。それでもあいつら押し付けて来やがって…」
「押し付けられたの?ついでに胸とかも押し付けられてきた?」

悟空はにっこりと笑っている。しかし、三蔵には見えていた。背後に微笑む悪魔が。
ーーー冷静になれ。
三蔵は腕を組んで自らを奮い立たせた。悟空はまず浮気を疑っている。そこを解決させるのが一番だ。
小さく息を吸い込むと、三蔵は口を開いた。

「いーか。猿。よく聞け。ソレは悟浄が酒を奢るっつって騙しうちで連れて行かれたやつだ。俺が一人で行った訳じゃねぇ。それに俺は残念だがお前じゃねぇと勃たねぇ。よって浮気にならなぇ。牛舎に行って乳牛の乳見たぐらいで浮気になるか?違うだろう?」
「…ふーん。乳牛ねえ…じゃあなんでおっパブの名刺まであんの?乳牛の乳見たって楽しくねぇんだろ?」
「それは悟浄に押し付けられたやつだ!俺が行くかそんな気色悪い所!!」
「そーだよねー三蔵はおっパブなんか行かないくても電話したら来てくれる綺麗なオネーサンがこんなに沢山いるもんねー!」
「違うっつってんだろ!」

イライラと机を叩き割る勢いで殴ると、悟空は反対に冷静な目で三蔵を見つめた。
常ならば金色の温かく感じるその目が、今日はやけに冷たく三蔵を詰るように煌めいた。

「三蔵さぁ、俺が焔に言い寄られるといい気しないだろ?俺も三蔵に綺麗なオネーサンが言い寄るといい気しないよ。浮気してる、とかそんなんじゃないと思うけど、不安になるじゃん。分かるだろ?」
「…ああ。」
「俺は三蔵のこと大好きだからさ」
「ああ。…分かっている。」
「だから罰として皿洗いと風呂掃除と床の雑巾がけ一ヶ月して?」
「ああ…あ?」
「俺を不安にさせた罰。いいだろ?それからこの事は八戒にもしっかりチクっとくから悟浄からお誘いはないと思うけど、当分外飲みも禁止な。」
「…あ、ああ。」
「じゃあよろしく。俺バイトだから」

ガックリと机に突っ伏した三蔵を見下ろしながら、悟空はさらににっこりと笑った。




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