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※シリーズについて補足※

食虫植物【花屋シリーズ】2014/8
2014/08/30 06:10

「おっはよー三蔵!今日はいいものがあるんだぜー!じゃーん!食虫植物ー!!!」
「………」


嬉しそうに取り出されたそれを三蔵は若干引き気味で受け取った。
茹だるような暑さの日曜日、午前8時。惰眠を貪っていた三蔵の部屋のドアをガンガンと叩いて押しかけてきた、目の前の大学生。悟空。
受け止めた鉢はどうせまたバイト先から貰ってきたものだろう、手のひらサイズの鉢の中には10センチくらいの植物が植えられていた。
葉も小さく、何本か出ている触手の先には紫の二枚貝のような花だろうか。何かよくわからないものが付いていた。
寝癖の付いた頭をガリガリとかきながら、三蔵は不機嫌さを隠そうともせずに口を開いた。

「これはなんだ」
「食虫植物!えっと、ここの紫のところでハエとか捕まえて食べるんだって」

ぞわ。想像しただけで気持ち悪い。
三蔵は虫関係は一切受け付けない。なんてものを寄越したんだと、非難の混じった目でジロリと悟空を睨みつける。

「気色悪い!いらねぇよこんなモン!」
「何でだよ!三蔵の部屋に置けばいいじゃん!三蔵虫嫌いだろ!」
「俺の部屋には虫はおらん!お前の部屋の方がよっぽど居るだろ!」
「いねーよ失礼な!」
「ベランダ森みたいにしてんじゃねーか!虫絶対居るだろーが!」
「いねーって!!」

ガチャリ。
三蔵の部屋の対のドアが開かれて、隣人がのそりと姿を現した。そして。

「あのー、静かにしてもらえませんか。」

三蔵と悟空はお互い顔を見合わせた。その後、隣人にそれぞれ詫びを入れると、すごすごと二人で三蔵の部屋に消えて行った。


2014/8



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