私だけの花婿さん(アイラver)

本当に自分なのだろうか、これは。姿見に映る自分の姿を見てそう思った。
「やっぱり見立て通り!よく似合ってるわ!」
「本当ね、このマーメイドドレスはアイラにぴったりだわ」
きゃいきゃいとはしゃぎながらエスリンとエーディンが手を揃えて言う。確かに体のラインが見える大人っぽい、それでいて素朴な作りのドレスはアイラに良く似合っていた。
「アイラ、ホントに髪の毛アップしなくて良いの?なんかもったいない」
そう言うのはシルヴィアだ。可愛らしく、そして大人の女性らしさを表現する髪型を、アイラはいつも通りで良いと言った。
「ああ、そんなに飾るのは私の趣味に合わないからな。ただ・・・」
「ただ?」
「これをどこかにつけて欲しい」
「?ブローチ?」
「ああ」
アイラが大切そうにハンカチにしまっていたもの。それを差し出したのは、アメジストの光輝くブローチだ。装飾はシンプルでそれほど大きくないが、それは綺麗でアイラの胸に飾るはず、だった。
「うふふ、それってアーダンの贈り物?」
「ま、まあそうだ。・・・戦いでは無くしてしまうしな」
「ああ、だからハンカチにしまって大切そうにしまっていたのね」
エーディンが切り返すとアイラは恥ずかしげにそっぽを向いた。それだけじゃないのだが、と思ったが敢えて言わないことにした。
「じゃあそれ、チョーカーの結び目に付けましょ。胸よりその方が良いわ」
「じゃああたし付けたげる!」
シルヴィアはブローチを手に取り、アイラの首のチョーカーにつけ始めた。それはアイラに良く似合っている。
「キレー・・・アイラ、すごく似合ってる!」
「あ、ありがとう・・・」
似合うとか綺麗だと言われる度になんだか照れ臭くなって、アイラの顔色はうっすらとピンクに染まっていた。それに気づいたエスリンとエーディン、シルヴィアは揃って顔を見合わせ、くすりと笑った。
「では、準備が出来ましたと向こうに知らせますね」
「じゃあ私たちは式場で待っていましょ」
「はーい、うふふ。アイラの姿をみたらどんな反応するかな?」
「必ず綺麗だとおもうわ。だって自分の花嫁さんなんだもの」
それもそっか、とシルヴィアが納得しながら三人は部屋を出た。一人残されたアイラは、そっと姿見に手を添え、あまり飾り気のない花嫁姿を見てくれるアーダンはどんな反応をするか、少しだけドキドキしていた、その時、コンコンとノックの音が聞こえた。アーダンだ、即座にそう思った。心臓が跳ねる。

「あ、アイラ・・・俺だけど」
「準備はできてる。入っていい」

ドアを開けると、そこにはアーダンの普段見せない姿がそこにあった。特注のタキシードを身にまとい、ピシッと決めたアーダンはいつもよりも数段、しゃんとしていて、格好良かった。が、アーダンはアイラを見てどこかにやけを噛み殺した様な顔で目の前の花嫁を見ていた。あんまり見るものだからアイラは恥ずかしげに俯いた。

「アーダン・・・その、何か言ってくれないか。恥ずかしい・・・」
「いや、その、想像以上に綺麗で何て言って良いか・・・うん、キレイだ」
「あ・・・、アーダンもその、似合っている」
「お、おう・・・」
チョーカーに向けた視線に気づいたのか、アイラは大切そうに触れた。
「アーダンから最初に貰ったものだから。それにこの場で付けるのがいいと思って」
「・・・ああ、似合っているぜアイラ」
「ありがとう」
そう、これはアーダンと恋人になって初めての誕生日。いかにも手製のぶきっちょなラッピングの中に、小さくあったそのブローチ。それが嬉しくて、ハンカチに包んでいつも持ち歩いていた。戦いの中でも、お守りとしていたのだ。それだけ、このブローチに対する思いは強かった。

「アーダンさん、アイラさん。皆さんがお待ちかねですよ」

ノックの音とともにオイフェの声がした。もうじき式が始まると。アイラはそっといとおしいとばかりにアーダンと腕を組んだ。アーダンはいつもと変わらない、けれどもアイラにだけ向けるやさしい笑顔で頷いた。

「行こうか、俺の花嫁さん」
「ああ、私の花婿さん」
「幸せにするからな」
「・・・ん、私も」




あとがき
『花嫁さん、花婿さん』のアイラバージョン。アイラにはマーメイドが似合うと思います。
『俺だけの花嫁さん』を書いてる途中で、アイラバージョンも書きたくなって、これは書かないと!と思って書いてみました。楽しかったです(笑)


2015/10/31  マリ

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