俺だけの花嫁さん(アーダンver)

「まさか、アーダンが俺より先に結婚するとはなあ・・・」

感慨深いというか、何というか。とアーダンの支度を手伝っているアレクの一言にその場にいたノイッシュもお調子者の発言に苦笑しながらも同意した。
「確かに」
「そりゃどういう意味だよ」
「言葉通りの意味。おっと今は動くなよ。タイがずれるだろ」
アーダンは納得いかないというような顔でアレクを身動きとらずに見ていた。
「しかもアイラを、だぜ?俺はもっとこう肝っ玉な・・・」
「言うんじゃないアレク。アーダンが怖い顔をしている」
「おっと悪い」
折角の晴れの日に余計なことを言うんじゃないといさめるノイッシュの言葉に口をつぐんだアレクによろしい、とばかりにアーダンは肩で息をした。
今日はいつもの青いアーマーを脱いで、真っ白なタキシードを来ている。いわゆる主役服。今日はアイラとの結婚式だ。という事でアレクとノイッシュ、そしてこれから義理の弟となるシャナンが、特注のオーダーメイドのタキシードを身に纏っているアーダンの支度係りを買って出たのだった。特注のタキシードは体の大きなアーダンにピッタリだ。
「よし、男前の完成!まあ、『馬子にも衣装』と言ったところか?」
「アレク。・・・おめでとう、アーダン」
「僕からも、おめでとうございます。アイラ姉さんをお願いします」
そう言って頭を下げるシャナンに、アーダンはこれから義理の弟になるのに止せやいと頭をあげさせた。
「ありがとう・・・ううっ、可愛い奥さんをもらえて、祝福されて俺はなんて幸せ者なんだ・・・うっうっ・・・」
「あーまた始まったよ、これ」
「こらアーダン、泣くんじゃなくて胸を張れ」
ぽんと背中を叩かれる。そう、今日は感慨深く涙に耽る日ではない。戦いが続く最中でもささやかに、笑顔で、誰にでも祝福される日なのだ。新郎が泣いていては意味がない。ふとコンコンとノックの音が聞こえた。入ってきたのはエーディンだ。
「まあ、アーダンのタキシード姿素敵ね!」
「エーディン様、アイラの準備は」
「完璧に出来ましたよ。今部屋にいるから、アーダン見ていきなさい、惚れ直すこと間違いなしよ」
「だとさ。じゃ俺らは待ってるから」
「後でな。いくぞシャナン」
「はい、『花嫁の姿は新郎が一番先に見るもの』ですね」
「それ、誰に教わった?」
「レヴィン様に教わりました」
「・・・」
皆が出ていった後、アーダンは照れながら頬をかいた。アイラは美人だから、どんなに美しくなっているのだろうか。早く見たくて少し早足でアイラのいる部屋に向かった。

コンコン、

「あ、アイラ・・・俺だけど」
「準備はできてる。入っていい」

ドアを開けると、そこにはアイラの普段見せない姿がそこにあった。
真っ白な、ワンショルダーのマーメイドドレス。黒髪を下ろしたままなのがアイラらしく、飾り気が少ないが、アーダンはとても綺麗だと正直に思い、言葉を失った。
「アーダン・・・その、何か言ってくれないか。恥ずかしい・・・」
「いや、その、想像以上に綺麗で何て言って良いか・・・うん、キレイだ」
「あ・・・、アーダンもその、似合っている」
「お、おう・・・」
その首にはチョーカーがしてあって・・・その留め具にアーダンは見覚えがあった。確か付き合いはじめの頃、彼女にプレゼントしたブローチではなかったろうか。アーダンの視線に気づいたのか、アイラは大切そうに触れた。
「アーダンから最初に貰ったものだから。それにこの場で付けるのがいいと思って」
「・・・ああ、似合っているぜアイラ」
「ありがとう」
互いに照れながら褒め合っていると、ノックの音とともにオイフェの声がした。もうじき式が始まると。アイラはそっとアーダンと腕を組んだ。アーダンはいつもと変わらない、けれどもアイラにだけ向けるやさしい笑顔で頷いた。

「行こうか、俺の花嫁さん」
「ああ、私の花婿さん」
「幸せにするからな」
「・・・ん、私も」

夫婦としての第一歩まで、あと少し。





あとがき
アーダンはたくましいので、特注じゃないとダメな気がします。肩がビッチリ過ぎて普通のだと破ける危険が・・・あわわ。
いやー、書いてて楽しかったです!
特にむせび泣くアーダン。
んで、レヴィンは年端もいかない子供(シャナン)に何を教えてんだ!(笑)


2015/10/31  マリ

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