「ちょ、ちょっと、双獅!」
水城が焦って双獅に声をかけると、双獅が爽やかな笑顔でこちらを向く。
「はい?どうかさせましたか?」
そして、何事もなかったかのように、水城に向かってそう問う。
「・・・そろそろ止めないと、鷹明さんが・・・」
水城の困ったような声に、双獅は一瞬考え込む。
だが、水城の言うことなので、従うことにした。
足を鷹明からどける。
「いってー・・・お前、やりすぎだって・・・」
鷹明が服の土を払いながら立ち上がった。
それから、思い出したように水城を見る。
「あぁ、それと姫さん。俺とはタメでいいから。姫さん今十六歳だろ?俺、十七歳の設定だから」
設定ってなに!?
そう言いたかったが、鷹明が話はじめたため、聞き損ねた。
「ちなみに、双獅が二十三歳で、鹿衣が十五歳、里狐が二十歳、拓蛇が・・・年齢不詳だ」
「いやですね、鷹明。私の年齢は企業秘密ですよ?まぁ、二十七歳とでも言っておきましょうか」
年齢不詳とされた本人はあくまで笑顔を崩さない。
「企業秘密ってなんだよ・・」
「フフ・・・企業秘密は企業秘密ですよ」
「・・・やっぱ俺、アンタが一番怖ぇわ」
鷹明がそう言った瞬間、双獅の目が鋭く光った気がした。
いや、実際には光っていたのだろうが。
「私よりも拓蛇の方が怖いんですか。では、あなたのその数々のトラウマの中に今日、もう一つ追加してあげましょう」
「ちょっと待て」
じりじりと鷹明に詰め寄る双獅。
引きつった顔で双獅が近づいてきた分だけ下がる鷹明。
「うわっ!!」
後ろも見ずに下がっていた鷹明が石に躓いてこけた。
その瞬間、双獅が鷹明に襲い掛かる。
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