13 里狐と鷹明、そして喧嘩

「・・・里狐(りこ)だ。よろしく」

彼はそれだけ言うと、流れるような動きで元の場所に戻った。

里狐の髪は日の光を反射して、キラキラと輝いている。

銀色のツヤのある髪がとても印象に残る。

その髪の間から覗く目は眠たそうにも見える、薄い水色の瞳。

本でも持って静かに座っていれば、それだけで絵になるような人。

「次」

里狐が短くそう言うと、次は双獅が前に出てきた。

「改めまして、双獅です。よろしくお願いします」

静かに双獅が頭を下げた。

頭を上げ、一歩下がると入れ違いで背の高い男性が前に出る。

「俺は鷹明(たかあき)だ。よろしくな、姫さん!・・・にしても、こんな可愛い姫さんなら、守りがいがあるってやつだな!」

ニカッと笑った顔は意外とあどけない。

よく焼けた肌はとても健康的な肌をしている。

目は少し鋭いが、彼の気さくな性格からか、全くトゲトゲとした印象を与えない。

「いーよなー、双獅は。姫さんに俺らより一日早く会ってんだろ?」

鷹明が双獅を振り返り、羨ましそうにそう言った。

その言葉を聞いた瞬間、双獅の顔が引きつった。

「ほぅ・・・あなたがそれを言うんですか・・・私は一つ、あなたに頼みごとをしていましたよね?私より一足先に水城様の元へ行って、軽く説明をしてくるように、と」

「え!?あ、えと・・・それは・・・」

鷹明が双獅に睨まれ、顔を青くした。

「そんなことも出来ないから周りから役立たずだ、とか言われるんですよ。わかってますか?理解してます?何回言えばわかるんですか?」

「わかってる!わかってるけど、お前から頼まれたの二週間前だぞ!前日ぐらいにもう一回言われなきゃわかんねぇって!!」

少し反撃をした鷹明に、双獅はニッコリと笑いかける。

もっとも、その笑顔の後ろにはハッキリと鬼が見えるのだが・・・

「二回言われないとわからない・・・?お前は小さい子供か!いつもいつも、一回で覚えろといっているだろう!お前の頭は飾り物か!」

「んだと、オラァ!!もう一回言ってみやがれ!」

おなじみの台詞をぶつける鷹明に、双獅はもう一度、先ほどの言葉を短く、繰り返す。

「何度でも言ってやる!!お前は子供か!いつも一回で覚えろと言っているだろう!!お前の頭は飾り物か!!!」

そう叫ぶ双獅の昨日までの面影は全くない。

あれ、この人双獅?と、見間違いではないことを確認するため、水城は軽く目をこする。

残念ながら、見間違いではなかったようだ。








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