「守護精よ。主の声に従い、ここに来たれ」
水城が静かな声でそう言った瞬間。
ザァ、と風が吹き、落ち葉や砂埃を舞い上げた。
「っ!?」
水城はとっさに目を瞑り、両腕で顔を覆った。
しかし、それも一瞬のことで、風はすぐに収まった。
ゆっくりと腕を下ろし、目を開く。
すると、そこには双獅の背中があった。
恐らく先ほどの砂埃から水城を守ってくれたのだろう。
双獅が水城の前から移動すると、目の前に四つの影があった。
どの影も人とはかけ離れている。
だが、不思議と恐怖心はなかった。
じっくりと端の影から見ていく。
右から、大蛇、狐、鷹、鹿だと思われる影が並んでいた。
(これが・・・守護精?)
守護精って・・・動物?
守護精って五人じゃないの?
頭の中に浮かんだ疑問を双獅に聞こうと、双獅を見上げたが、そこに双獅はいなかった。
驚いて回りを見渡すと、目の前の影が一つ、増えていることに気がついた。
(あれは・・・大型の犬?・・・いや、獅子?)
黙っていても仕方がないので、水城はとりあえず、彼らが守護精かどうか、確認することにした。
少し、不安な気持ちを抱きながら、目の前の五つの影に声をかける。
「あなた達が、守護精なの?」
水城が足を一歩踏み出した瞬間、澄んだ声が聞こえてきた。
『私達守護精はあなたを守るためだけにある。あなたが私達を必要としないのであれば、それでもかまわない。・・・あなたは私達を必要としてくれますか?』
頭の中に直接話しかけてくる声に戸惑いながらも、水城は静かに頷く。
「自分の置かれた状況もわからないし、これから先、どうすればいいかもわからない。頼ってばっかりじゃダメだと思うけど、今は私を支えてくれるあなた達が必要なの」
意を決してそう言うと、頭の中の声は静かに笑った。
『フフッ・・・ずいぶんと強い姫君でおられる・・・では、ここに誓いましょう。我ら守護精は水城様が我らを不必要となさるまで、水城様を主とし、この命に代えてもお守りいたします』
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