10 来たれ、守護精



『とても綺麗な髪をしているね』



聞き覚えのある声だが、誰の声か思い出せない。

(誰・・・?昔、そうやって誰かが髪を撫でてくれた覚えがある。あれは・・・誰?)

どこかで聞いたことがある声。

だが、誰の声なのか、思い出すことができなかった。

頭の中に霧がかかっているかのように、全く思い出せなかった。

「水城様?」

双獅に声をかけられ、水城は我に返った。

いつの間にか立ち止まっていたらしい。

双獅が心配そうに水城の顔色を伺っていた。

「ごめん。考え事、してて・・・」

「そうですか。ご気分が優れないのかと・・・」

「大丈夫。心配かけちゃってごめんね」

「いえ、それでは、行きましょうか」

そう言ってまた歩き出した水城達だが、双獅は先ほど以上に水城に気を使ってくれていた。

そのことに申し訳ないと思いながらも、先ほどの声のことが頭から離れない。

(・・・最近、どこかで聞いたことがあるように思ったんだけど・・・)

いくら考えても答えは見つからなかった。



町のはずれにある小さな森の前で、双獅は歩みを止めた。

水城の方を向いて、フッと笑みを浮かべる。

「ここに守護精を集めておきました。水城様がお呼びすれば、姿を現すように、と伝えております。どうか、守護精をお呼びください」

そう、双獅に言われたが、水城は呼び方を知らない。

ましてや、守護精という存在を昨日、初めて知ったのだ。

知っているはずがない。

どうしようか、と迷っていると、また軽い頭痛がおき、聞き覚えのある声が響く。

『守護精はね、こういえば・・・を守ってくれるよ』

頭の中に響く声と共に、水城は口を開く。





















「守護精よ。主の声に従い、ここに来たれ」











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