『とても綺麗な髪をしているね』
聞き覚えのある声だが、誰の声か思い出せない。
(誰・・・?昔、そうやって誰かが髪を撫でてくれた覚えがある。あれは・・・誰?)
どこかで聞いたことがある声。
だが、誰の声なのか、思い出すことができなかった。
頭の中に霧がかかっているかのように、全く思い出せなかった。
「水城様?」
双獅に声をかけられ、水城は我に返った。
いつの間にか立ち止まっていたらしい。
双獅が心配そうに水城の顔色を伺っていた。
「ごめん。考え事、してて・・・」
「そうですか。ご気分が優れないのかと・・・」
「大丈夫。心配かけちゃってごめんね」
「いえ、それでは、行きましょうか」
そう言ってまた歩き出した水城達だが、双獅は先ほど以上に水城に気を使ってくれていた。
そのことに申し訳ないと思いながらも、先ほどの声のことが頭から離れない。
(・・・最近、どこかで聞いたことがあるように思ったんだけど・・・)
いくら考えても答えは見つからなかった。
町のはずれにある小さな森の前で、双獅は歩みを止めた。
水城の方を向いて、フッと笑みを浮かべる。
「ここに守護精を集めておきました。水城様がお呼びすれば、姿を現すように、と伝えております。どうか、守護精をお呼びください」
そう、双獅に言われたが、水城は呼び方を知らない。
ましてや、守護精という存在を昨日、初めて知ったのだ。
知っているはずがない。
どうしようか、と迷っていると、また軽い頭痛がおき、聞き覚えのある声が響く。
『守護精はね、こういえば・・・を守ってくれるよ』
頭の中に響く声と共に、水城は口を開く。
「守護精よ。主の声に従い、ここに来たれ」
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