「・・・さま・・・様・・・」
「・・・ん・・・?」
「水城様・・・水城様!」
自分が呼ばれていると気付いた水城はうっすらと目を開ける。
一瞬にして、暗闇から光の世界へと引き戻された水城は、自分の置かれている状況が飲み込めなかった。
どうして男の人が部屋の中に・・・?
どうしてその男の人が私を起こしてるの・・・?
どうして・・・
そんな疑問が頭の中をぐるぐると回りだし、一つの答えへとたどり着いた。
この男の人は双獅。
自分に大切な役目を教えてくれた人。
そして昨日は、双獅と一緒に寝て・・・
そこまで頭が整理できた時、昨日の自分のしたことが思い浮かんだ。
【私も寒いから一緒に寝たら暖かいかなって思って】
(一緒に・・・寝たら・・・?)
よく思い出してみれば、双獅が抵抗するのを押さえ込んで一緒に寝た記憶がある。
昨日の自分の行為を思い出し、顔に熱が上がっていくのがわかる。
昨日のことなど気にしていない、とでも言うように、双獅は飄々としている。
「そ、双獅・・・。何で人型なの?」
「あぁ、朝はこうなるのです。黒猫姿は力を使っているので、力が弱まる朝は、よく集中していないと人型に戻ってしまうのです」
申し訳ありません、そう言って双獅は猫の姿に戻った。
『では、私は少し出掛けてきますので、出掛ける用意ができたら、お呼びください』
双獅はそう言うと、水城の返事を聞かずに、急いで窓の外に飛び出していった。
「あ・・・」
双獅が水城の返事を聞かずに出て行ったということは、よほど大切な用事だったのだろうか。
水城は双獅が出て行った窓に近づき、外を見る。
すでに双獅の姿は無く、冬の冷たい風が吹いているだけだった。
(そっか。姿は猫でも男の人だもんね。ていうか、私。昨日出会ったばかりの男の人と一緒に布団の中に入ってたんだ・・・)
そう思うと再び、頬に熱が篭るのがわかった。
それと同時に、ズキッと軽い頭痛がした。
―双獅って本当に昨日会ったんだっけ・・・?―
―ずっと前から一緒にいた気がする・・・―
気のせいかも、と思い直し、水城は着替えを手に取った。
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