08 爽やかな朝?

「・・・さま・・・様・・・」

「・・・ん・・・?」

「水城様・・・水城様!」

自分が呼ばれていると気付いた水城はうっすらと目を開ける。

一瞬にして、暗闇から光の世界へと引き戻された水城は、自分の置かれている状況が飲み込めなかった。

どうして男の人が部屋の中に・・・?

どうしてその男の人が私を起こしてるの・・・?

どうして・・・

そんな疑問が頭の中をぐるぐると回りだし、一つの答えへとたどり着いた。

この男の人は双獅。

自分に大切な役目を教えてくれた人。

そして昨日は、双獅と一緒に寝て・・・

そこまで頭が整理できた時、昨日の自分のしたことが思い浮かんだ。

【私も寒いから一緒に寝たら暖かいかなって思って】

(一緒に・・・寝たら・・・?)

よく思い出してみれば、双獅が抵抗するのを押さえ込んで一緒に寝た記憶がある。

昨日の自分の行為を思い出し、顔に熱が上がっていくのがわかる。

昨日のことなど気にしていない、とでも言うように、双獅は飄々としている。

「そ、双獅・・・。何で人型なの?」

「あぁ、朝はこうなるのです。黒猫姿は力を使っているので、力が弱まる朝は、よく集中していないと人型に戻ってしまうのです」

申し訳ありません、そう言って双獅は猫の姿に戻った。

『では、私は少し出掛けてきますので、出掛ける用意ができたら、お呼びください』

双獅はそう言うと、水城の返事を聞かずに、急いで窓の外に飛び出していった。

「あ・・・」

双獅が水城の返事を聞かずに出て行ったということは、よほど大切な用事だったのだろうか。

水城は双獅が出て行った窓に近づき、外を見る。

すでに双獅の姿は無く、冬の冷たい風が吹いているだけだった。

(そっか。姿は猫でも男の人だもんね。ていうか、私。昨日出会ったばかりの男の人と一緒に布団の中に入ってたんだ・・・)

そう思うと再び、頬に熱が篭るのがわかった。

それと同時に、ズキッと軽い頭痛がした。

―双獅って本当に昨日会ったんだっけ・・・?―

―ずっと前から一緒にいた気がする・・・―

気のせいかも、と思い直し、水城は着替えを手に取った。







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