そう言った瞬間、双獅の体がポンッと音を立てて黒猫に変化した。
「なっ!?え?」
音と双獅の姿に混乱してしまった水城は、しばらく口を開けたまま呆然とした。
そんな水城の頭の中に、双獅の声が響く。
『必要以外はこの姿でいさせていただきます。ご安心を、この姿になっても、意思の疎通はできますので』
その双獅の言葉で、落ち着いた水城はそういうことじゃないんだけど、と小さくため息をついた。
「っていうか、猫になっちゃったけどさ、私以外の人の言葉、わかるの?」
『大丈夫ですよ。ですが、猫に話しかけている人などあまり見かけませんから、そこだけはご注意ください』
「あまりっていうか、見たこと無いんだけど・・・。あ、でも双獅、ご飯とかはどうするの?」
水城は、さっきから尋ねてばっかりだ、と思いながらも、疑問に思ったことを口にした。
そんな水城に双獅は優しく答えてくれる。
『言っていませんでしたか?神になった者は食べ物を食べなくても生きていけるんですよ。まぁ、食べたい人は食べてますけど・・・』
「へー・・・んじゃ、ご飯は用意しなくていいんだ」
ほっと一息つくと、水城は猫になった双獅を優しく撫でた。
双獅は気持ちよさそうに目を細めた。
しばらく和やかな空気が流れる。
ふと、思い出したように双獅がパッチリと目を開き、水城を見据えた。
『そうそう。一つ、言い忘れていました。明日、あなた様を守る五人の守護精という者たちを紹介します。水城様は高い霊力をお持ちで妖から狙われやすいのです』
「その妖から、私を守ってくれるのが五人の守護精?」
『えぇ。どんな者たちかは、見たほうが話すよりもわかりやすいですから。・・・ただ、個性が強い人達ですから、引かないであげてくださいね?』
そう言う双獅の言葉には呆れたような響きがあった。
『それはそうと、水城様、ご夕飯はよろしいのですか?』
双獅に言われ、夕飯がまだだったことに気がつき、双獅にご飯食べてくると言い残し、一階へと降りていった。
『・・・あの者たちを水城様に会わせるのか。・・・多少、気が引ける。私が居なくてもしっかりとやってくれていればいいのだが・・・』
前←→次