▼3 「いやぁ、悪いなぁアイツ本当やんちゃで」 「そんな可愛らしいものですか、あれ」 暴れるのも忘れて見入る。 二対一だというのに押される様子もなく、むしろ和真の方が積極的に仕掛けている。 二人から喧嘩をしかけたりするはずもないから、和真からけしかけたのだろうが。 楽しそうに、スポーツでもして野を駆け回る少年さながらの爽やかな表情をしているのがむしろ恐ろしかった。 運動不足解消といった程度で半殺しにされては敵わない。 「なぁ堂島」 「なに?」 「今のうちに二人でしけこまねぇ?」 「しけこむ言うな! このド変態病原菌がっ。今日ちょっと二人ヒドい、いつも以上に…ああそうか。和真くん妹さんどうしたのよ!?」 ちょうど椿が投げた、シャープペンシルほどの小さなナイフをかわして間合いを取った和真が振り向いた。 「英語の小テストがあるから家で勉強すんだと」 「……あ、あまりにまともな理由過ぎて逆になんだか現実味がない。ていうか見習いなさいよお兄ちゃん!」 「おーいいな、お兄ちゃんって俺にも言ってくれよ」 「うっぜぇ!」 何時まで経っても離れようとしない大和に痺れを切らした紗衣が彼の腕に引っかき傷を作るも大した打撃にはならない。 「あ」 バアン―― 突如起こった破裂音に紗衣と大和の動きが止まる。 その隙に環が大和を蹴飛ばして紗衣を救出した。 「ね、ねぇ今のって……」 外からした音にまさかと思う。 だが環は椿が持っていたはずの円筒のスイッチを持っていて。 「ぽちっとな」 呟いた。 「マジかよ!? 爆発するとこ見たかった」 「いやん、環可愛い!」 「他人様のバイクに何してくれてんだっ、弁償しろー!」 「環あんた実は腹に据えかねてたのね」 四者四様の反応にも環は表情一つ変えない。 「特に用事もないようなので帰りましょう」 スイッチをその場に捨てて紗衣の手を取る。 帰る事に依存は無いが、その前に一つだけはっきりとさせておきたい事があった。 それが解決しなければ外には出られない。 「ねぇさっきの爆破だけど……」 「ああ大丈夫ですよ、威力は打ち上げ花火くらいだから」 「じゃなくてガソリンに引火とか……」 「……環、紗衣を担いで。あっちの窓から出るわよ。ほら早く」 難なく紗衣を担ぎ上げた環はさっさと窓に駆け出した。 椿もその後ろを追う。 呆気に取られた和真と大和を放置して。 「お前等――」 二人の叫び声が聞こえてきたときにはもうとっくに教会の外に出た後だった。 ガソリンに引火して二次的な爆破が起こったのかどうかは知らない。 end '11.03.20^'11.04.15 前 | 次 戻 |