summer station(下)



 大きな体躯、凛々しい顔立ち、聡明そうな目元。
 だけど知ってましたか、シベリアンハスキーは結構アホの子が多いんですよ。
 
 その事をね、ウタを見てるとつくづく考えてしまう。
 シルバーの髪もブルーアイズも、日本人離れした透き通る白い肌も美術作品のようなのに、ウタはちょっと頭が弱い。
 
 そんな所も私は可愛いと思うけど、これが北チームの中枢を担う人物だって言うんだから、大丈夫か北と心配してしまう。
 大した人選力じゃねぇかと鼻で嗤ったのは西さんだ。
 
 北は武道派揃いで、規律がどうとか結構煩いはずなのに何故ウタは放任されているのか。
 北さん、ウタの教育に何故ベストを尽くさないのか。
 それともウタの能力を信頼しているのだろうか。彼は拠点をウタに任せて現在南へ出ているらしい。
 
 東さんとショカさんも実はそうらしく、西さんに連れられて私まで結局行く事になった。
 
 西さんが戦力にとウタを連れて行きたがったんだけど、私も一緒じゃなきゃ嫌だとハスキーが駄々を捏ねまして。
 
 私を殺す気か! と散々突っぱねたにも拘らず、強制連行されました。
 
 
 今向かっている南は、数年前に私の姉がその辺を仕切っていたチームを壊滅させて以降、新たなチームが作られる事なくここらじゃ一番治安が良いとされていた場所のはずなのだけれど。
 
 聞いた話、ここ数ヶ月でどこのチームにも染まれなかった不良さん達の吹き溜まりと化してるのだとか。
 
 学校は嫌いなくせに、集団行動を強制されるチームには何故かすんなり馴染める人が多いという、不思議属性の不良さんの中にも例外はいるらしい。
 
 でも最終的には、そんな人達が一塊になって。
 
 それはそれで統制が取れてたらいいんじゃないのって話だけど、そうじゃないから問題になっているわけで。
 
 青春という意味をはき違えて、盗んだバイクで走り出してみたり、校舎の窓ガラスを割ってみたり、他チームにやたらとちょっかい出したり(ウタもやってたけど)、終いには一番やっちゃいけない一般の人を襲うなんて悪行をやらかしている。
 
 お姉ちゃんが苦労して払拭した黒歴史を繰り返す輩許すまじ。
 ウタさん西さんやっておしまいなさい!
 
 東さんだと語呂が悪かったからウタにした。
 
 
 恒例になりつつあります、説明している間に移動完了。
 私は西さんの後ろ、ウタは西さんの有能な部下さんの後ろに乗ってやって参りました、戦地南へ。
 
 大きなバイクに凭れかかって煙草の煙をくゆらせていた東さんが、私達に気付いて手を振った。
 
「お前等来たか! お、高鳥は機嫌直ったな」

 快活に笑い東さんはウタの頭をわしゃわしゃと撫でた。
 ウタはうー、と手を払って嫌がる素振りを見せるものの、噛み付きに行かないという事は本当はそこまで嫌がってはいないのだろう。
 
 懐いているとまでは言わなくても、心許しているのが見て取れる。
 ウタはあの通り警戒心の強い獣のようだから、なかなかこうはならない。
 ほっこり暖かな気分にさせてくれる図じゃないか。
 
 包容力ある総長×警戒心強い狂犬

 この二人のポイントは、別チームにいるって所だよね。
 
 


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