▼2 基も正義感からくるやる気ではなく、遊び感覚ですよ。結局その程度ですよ。 被害がみじんこなのでね。 「えーとポテトチップスはコンソメでぇ、じゃがりこはチーズ。カールはカレー」 「オリリンちょいそれはチョイスが偏り過ぎだよぉ、どうしてかっぱえびせんが無いのかな」 「カールはチーズだろ」 「ちょっと三人共! 基はもう放っておくとして、時芽のツッコミが更にツッコミ待ちってどうなの!? 稔はスルーしないの!」 私の負担を考えてください。 ポテチを奪い取って袋を開ける。 「甘い系! チョコが無いと死んじゃう! ていうかうまい棒たこ焼き味は何処!?」 「チョコ味じゃねぇのかよ。たこ焼き味ってマニアックだな」 「なにおう、真のマニアは納豆味に行くの!」 「そんなのあるんだぁー」 ばりばり、もしゃもしゃと。 あれ、何しに来たんだっけ。お菓子パーチーだっけ。 放課後の教室の中、四人でお菓子広げてお菓子談義。 「ベビースターラーメンにさぁ、お湯かけたらチキンラーメンになるって小さい頃思わなかった?」 「ショックだよな、ふやけてべちゃべちゃになるし、味消えるし」 「かたミーもやったんだぁ」 「いた! じゃがりこが上あごに刺さった!」 「うわぁ地味に痛そ」 塩やら何やら手がベタベタになってきたけど、誰一人ティッシュなんて思っていない事実に行き当たった。 「手ぇベタベタになっちゃった、基のシャツ貸して」 「おういいよ、洗って返してちょ。もう三日着っぱなしだったからちょうど良かった」 「えええー汚っ! 夏なのに。もう七月なのに!」 「うっそぴょーん」 「それこそが嘘くせぇよ」 「臭い臭い。漂うヘドロの臭い、ピュアどぶオリリン!」 「ピュアっぷりが何処にもないだろうが。謝れ、取り敢えず夢見る世界の少女達に謝っとけ」 「つかオレの机がカスまみれなんですけど、油ついた手で触るから指紋ぺったぺたなんですけど!」 カスを床に払い落とす。 あーもう私の机で食べるの止めれば良かった。隣の子の机にすれば良かった。 「お前等何やってんだ、ティッシュ持ってないならスナック菓子は食うんじゃねぇーっ!!」 ぺたーんと小気味の良い音がしたと思ったら、机の中央に未開封のポケットティッシュが叩きつけられていた。 「あと、カスを下に落とすな! 掃除した奴等に申し訳ないと思わないのか!」 四人揃ってご立腹の子を見上げていた。 知らない子が、大変怒っていらっしゃる。 脱色されつくした髪は立てられ、ライオンの鬣みたいだ。 眉も整えて細いし、耳には無数のピアス。 厳ついんだけども、背が低くて顔立ちが幼いから、頑張って悪ぶってるぜって感じで微笑ましい。 不良に憧れる子の域を出ない感じが堪らないなぁ。 しかも私達にかました説教何あれ、物凄く善い人の台詞だったんですけど。 ティッシュを持ち歩く不良ってなんだ。 「もしかしてー、君がカナくんに嫌がらせしてた犯人?」 冷静に、緊張感無く時芽が指摘した。 すると急に顔色を悪くした不良(未)くん。 分かり易い。 「おおテメェか。見ない顔だな、何かコイツに恨みでもあんのか、ああ?」 ずいと不良くんに近づいて、メンチ切るのは基だ。 そうね、本当は緩いキャラだから忘れちゃうよね。外見だけならよっぽど基の方が不良っぽいって。 ほらほら犯人の方が怯んじゃってんじゃん。面白がってからに。 にしても本当格好だけだな、不良くん。 「さっさと言えよ、何で堂島につまんねぇ嫌がらせしてんだ」 「……稔これじゃあどっちが苛めてんのか分かんないよ、基も」 ぷるぷる震えて今にも泣き出しそうじゃん。 被害者の私が可哀相とか思っちゃいそうだからやめてあげて。 前 | 次 戻 |