▼4 因みに仕切り板は只今全開です。 暗くて見えないけど、向こうのベッドで眠る稔と私を隔てる壁はありません。 え、え、稔いるよね? 身動きする音さえ聞こえないから一瞬、霊的な何者かに連れ去られちゃったのかとか思っ……、いるよね? 音を立てないように稔のベッドの横まで行くと、彼はちゃんといた。 何でもないようにすやすや眠っているのが憎たらしいが。 怖がりのクセに神経図太い奴だな、羨ましい。 雲が途切れたのか、月明かりが室内に入り込んできて、稔の姿が浮き上がってきた。 怨念の籠もった目でその綺麗な顔を見下ろす。 「うおおぁっ!!」 すっと前触れも無く目を開けた稔が、寝ぼけているとは思えない俊敏さで起き上がった。 ベッドサイドにいる私がそんなに怖かったか、そうか。 「お、おま、何やって……」 「稔の綺麗な寝顔を堪能してた。悪夢で魘されればいいのに」 「やな奴だな」 全くやれやれ、とでも言いたげに顔を顰めた稔が、腕を引っ張ってきた。 「うわっ」 不可抗力でベッドに乗り上げてしまい、急いで降りようとすれば、更に上から布団を掛けられ。 何がしたいの! もがいて布団の海から顔を出すと、目を細めて私を見ている稔がいた。 月の色を吸収した瞳は優しく穏やかだった。 「そんな怖いならこのままここで寝とけ」 ここ。つまり稔のベッド。 ごろりと彼も横になる。シングルベッドの端に男が寝そべって、空いたスペースなんてたかが知れている。 ここで寝ろと……。 二次元ならこんな美味しいシチュエーションはないと思う。が、実際に年頃の男が二人身を寄せ合って眠るという絵は中々にシュールだと気付かされた。 私は女だけど女に見えちゃいけないんだし、稔からしたら男なわけだし。 どういうつもりでこんな事をと考えるまでもなく、私が怖じくそでギャーギャー言ってたから落ち着かせる為なんだろう。 この男はどうしてこうも男前なんだ。弟か妹がいるのかな。 さぞかし中学時代からモテたに違いない(男女問わず)。 折角の好意を無碍にはするまい。正直、むちゃくちゃ助かる。 すぐ手の届く位置に誰かが居てくれるってだけで安心出来るものだ。 稔に布団を掛けて、ついでに私も中に入る。 よいしょ、と稔に背を向けて寝転んだ。 体温を感じるほどくっついているわけじゃないけど、隣に男の子が寝ているのだと思うとなんだか恥ずかしい。 毎日仕切りで区切られているとは言え、同じ部屋で眠ってるんだなんて、もうずっとなのに今更意識した。 次の日、基と時芽に一連の流れを話すと、大爆笑されました。 因みに眠りにつく瞬間に考えていたのは、幽霊攻めと霊感少年受けとかありじゃね? です。 end '10.6.15~6.28 前 | 次 戻 |