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「おっきーこんな所で何してんの? 愛しの稔なら今日は家族水入らずでここにはいないよ?」
「知ってる」

 知ってんのかよ! どんだけ情報駄々洩れなの、どんだけ連絡取り合ってんの!
 仲良過ぎて腹立つ、羨ましいなもうっ。私も稔ともっと仲良くなりたいよ。おっきーを蹴落として親友の座に君臨したいわ。
 
 しかし「愛しの」の部分を否定しなかったので今回は溜飲を下す。
 そうですか稔が愛しいですか。愛しちゃってますか。
 
「つーかこのタイミングで出て来たんだから分かるだろ、相変わらずのお馬鹿さんなの?」
「おっきー!!」

 きさまぁっ!! 親の仇に会ったかのように声を絞り出す。
 どうしてこの男はいっつもいっつも私につっかかってくるの!
 しかし私が何かする前にウタが未開封のコアラのマーチを投げて見事おっきーの顔面に叩きつけた。でかしたウタ!
 
 しかし誰チョイスだコアラのマーチ。可愛らしいじゃないか、是非唯先輩に食べてもらいたい。
 レアコアラとか出してくれそうだよね。盲腸コアラって本当にあるのかな。お腹に切り傷があるコアラが泣いてる絵だとか聞いた事があるんだけど。
 唯先輩にそれを引き当ててもらっておっきーに食わせてやりたい。
 
「もしかして、おっきーが東さんの次のリーダーだとか言う?」
「言うね!」
「言うな」

 東さんとおっきーが同時に頷いた。……マジか。
 私はそっと目を瞑り、目頭を片手で押さえるとこれ見よがしにふぅと溜め息を吐いた。
 
「何その反応」
「東さんの人の見る目の無さに失望を通り越して憐れみを覚えてしまいました」
「はっはー! 東儀さん馬鹿にされてるッスよー」
「お前もだ馬鹿汐!」

 いいな、馬鹿汐。ていうか仲いいじゃないのよ。
 まぁ東さんは結構誰とでも摩擦なく上手に渡って行けるからなぁ。なんてったって唯先輩とだってコミュニケーションとれちゃうんだからね。
 その辺の能力を買われてリーダーに就任したんだろうし。
 そんな事を考えながら唯先輩を眺めていると目だけをジロリとこっちに向けてくる。
 
 流し目ですね! え、違う? 睨まれただけ? 知らんなぁ。
 
「まぁなんだ、コイツのこの異様な肝の据わり方が気に入ったからスカウトしたら、あっさり引き受けてくれたんだよ」
「おっきーは何か信条があって一匹狼気取ってたんじゃないの!?」
「いんやぁ? 別に気取ったつもりもねぇけど」

 だったらあなた、入院までして一体なにやってたのよ!? どうしてもチームに入りたくない理由でもあったのかと思ったのに。
 本当に何考えてるのか分らない。
 
「ちょっとウタ、この人の頭の構造どうなってんの?」
「オレに分かるわけがない」

 ないのか! 言い切っちゃうウタが好きだよ!
 ずるっとおっきーがずっこけた。あの人の調子を狂わせるとはやりおる。
 これから対おっきー用の切り札としてウタには活躍してもらおう。
 よしよしと頭を撫でる。
 
「でも東さん、ぽっと出のおっきーを選んでも、チームの皆さんが納得しないんじゃないの?」
「そんなもんはコイツ自身でどうにかするもんだおれは知らん!」
「丸投げ!」

 私も知ったこっちゃないけどね! 取り敢えず聞いてみただけだし。
 がんばれおっきー、また病院送りなんて事ないようにね。
 
 それにしても三チームとも主力メンバーが抜けちゃって、結構大変っぽいな。
 先代に続き東さんも唯先輩もリーダーシップが取れてたけど、そんな人が常に一人二人と揃うとは限らない。何せこの世はゆとり世代。
 北も特攻隊長のウタが抜けたら痛手だだろうし。
 
 また近々この町は変革を迎えるかもしれない。まぁ私にとっては他人事ですがね!
 
 



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