結局残りのうどんは基が食べました。
 味気ない、味気ないと文句を散々言いながら。
 
 シンプル イズ ベストって言葉を知らないのか。
 ちゃんと薬味は入ってるし。私は一味より七味派です。稔にどっちでもいいって言われた。
 
「カナくんあんなで足りるの? 後でお腹空いても知らないよぉ?」
「時芽はオレのお母さんか」
「お母さん心配だわぁ、カナくんったら何時まで経っても発育不良でー」
「うひゃうっ」

 時芽がするりと私のお腹を撫でた。
 
 ちょちょちょい! お、おま、何やっとんのじゃぁぁーーっ!!
 
 逃げ出そうとしたけど、先に腕を取られ逆に引き寄せられた。
 腰をがっちりと固定され、もう片方の手が身体のラインを確かめるように首筋から肩とゆっくり降りてゆく。
 
「あ、と、ときめ……何す、いや……やめっ」

 身体を捻って抵抗を試みた瞬間、ガツン、ゴツンと小気味の良い音が当たりに響いた。
 
 途端、時芽の手が私から離れ、彼はその場に蹲り、そして私もその隣で同じように頭を抱えながらしゃがみ込んだ。

「いってええぇぇぇっ! 何でオレまでゲンコ食らわなきゃならんの!? 全面的に悪いの時芽じゃん!」
「どっちもキモイからだ!」
「高見沢くんひーどーいー、秋月泣いちゃうぅ」
「誰だ高見沢って!? 方波見! ニアピンでもねぇじゃねーかよ!」
「自分を過小評価しちゃいけないよぉー。かたミンは高貴なオーラあるし、何より縦ロールがそっくりね!」
「誰があんな長髪か!」

 今度は基まで顔面パンチが入った。
 
 食堂の端っこで不条理なDVを受けて倒れる三人と、憤慨する加害者。

 もっと細かく言えば、まるで輩のように基の胸倉を掴んで揺さぶっている稔に、爆笑し過ぎて腹筋が痛いと床に突っ伏している時芽、彼等を他所にめそめそ泣く私。

 別に稔の一発が痛かったせいじゃない。いや痛かったけども!
 じゃなくて、あれだけセクハラ紛いの触り方をしておいて、時芽は悪びれるでもない。
 それどころか声を上げて笑いながらバシバシ肩を叩いてくる。
 
 また気付かれなかった。覚えてますか、身体のラインを確かめるように、触ったんですよ。
 押さえてパッと見分からなくしてるとは言え、あれだけしたら胸にも気付くもんじゃないですか普通。
 
 ああそうか。元々がそんな大きくないからなのか。
 そっかそっか。ボインじゃなくて良かったなんて思う日が来ようとは思いもしなかったけれど。
 こんな時ばかりは大きくなくて本当助かったって思……
 
 
 ――て。良いわけあるかああぁぁぁーーーー!!
 
 
 どこまでコイツ等幼馴染コンビはナチュラルに私のコンプレックス刺激してくるの!? 態となの!?
 
 てか男だと認識してる奴にここまでセクハラしてくるって、実はコイツ等男いける口だろ、バイか、バイなのか!
 
 萌えるじゃないか畜生
 
 


end

'10.5.5~5.16



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