そもそも、私がこいつ等とつるむようになった切っ掛けは時芽だった。
 出席番号が前後で、私が珍しい高校からの外部生だから時芽から声を掛けてきた。
 
 そこへ時芽の連れだった基も当然のように集まって、気がついたら一緒に行動するようになってた。
 私がこの学校に腐的な萌えは関係なく馴染めたのは時芽のお陰だ。
 
 いまいち何を考えてるのか分からない、底の深い男だけど味方についていれば頼もしい。
 
「カナくんどーしたの、うどん伸び伸びになるよー?」
「え、あー…」

 愛ある鬼畜の可能性について悶々と考えてましたとか言えない。
 箸で摘んだまま数分放置されて、乾ききったうどんをつるりと飲み込んだ。
 
「つかうどんって。運動した後はもりもり食うもんじゃね?」

 もりもりとカツ丼をかき込む基。

「動いた後の方が食べられないもんでしょうが。基見てるだけで胸焼けする」
「カナちゃんそれ意味違くね?」
「折笠見てるだけでイライラする」
「かたミンまで! ちょっと201号コンビってば酷過ぎるよ!」

 201号室は、私と稔の寮の部屋番号。そんなコンビ名嫌だ。
 
 しかも本当に酷いのは泣きついてきた基の額を箸で刺した時芽だろ。そして汚いな。

 時芽は暴力的とは違うけど、他人の痛みに疎い。というか敢えて無視しているような気がする。
 
 最初に話しかけられた時だってそうだった。
 入学式の日、簡単な自己紹介とHRを終えてさっさと寮に帰ろうと席を立った私の襟首を掴んで思い切り後ろに引っ張ってきたのだ。
 
 急に掛かった首への負荷のせいで「んまっう」と素っ頓狂は声を出すと、時芽は平時閉じてんじゃないかってくらいの糸目なのに、ぱちくりと見開いて
 
「ぶっはは! サザエさんだぁー!」

 と爆笑しくさった。ちげーよ、サザエさんは「んまっんん」だ! と反論すると更に笑われた。
 
 後にも先にも、ちゃんと目開いてる時芽見たのってあれだけなような。
 
 基にはそれはかなり貴重だから、きっと良い事あるよーって言われたけど別に何も無かった。
 騙された、基のくせに騙しやがった。
 
 あれか、俺達と仲良くなれたのが幸運だとか、そういう事か、死ね。
 いや、良かったとは思ってるけどね。二人と友達になれて。
 絶対言わないけど。青春ごっこみたいで恥ずかしいから。
 動機に多少不純な点がある事だし。
 
「にしたって、うどんはうどんでも素うどんって、僕頼んでる人初めて見たし」

 まだ半分くらい麺が残ってる鉢の中に時芽が箸を入れてぐうるりと掻き混ぜてきた。

「ちょ! 時芽何してくれてんの!? それ今基刺した箸じゃん!」
「えぇーっ、秋の唾液より俺の汗の方が嫌なの!?」
「唾液言うなっ、生々しいだろうが。もうこれ食べられなくなっただろ!?」

 どうしてくれんだ、勿体無い!
 基の汗と時芽の唾液って何その体液のコラボレーション。化学反応起こしそうだよ!
 
「食べたら腹壊すんじゃねぇ?」
「じゃあバミーにあげるっ!」
「じゃあって何だ、バミーって言うな!」
「方波見だからバミーじゃん、何も可笑しいところなんてないよ、ぷぷ!」
「どーうーじーまーっ」

 アイアンクローされました。
 同室者からのDVに悩まされる今日この頃。
 
 それが照れ隠し故のものならいいのに……。もちろん私にじゃなくってね。
 素直になれなくてついつい攻めに可愛らしい暴力振るっちゃう受けとか好き。
 


|


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -