page.1



 BLにおいて王道主人公が全寮制の高校に入学した場合、寮の同室者の設定は2パターンある。
 
 1つは人当りがよく大人しい、全ての経験値が平均的な、まあようするに平凡な子。
 この子は巻き込まれ型といって、破天荒な王道に引きずられる形で本来なら一生関わり合いになるはずもなかった学園のトップアイドル達と仲良くなり、気が付けば王道そっちのけでスポットライト浴びちゃう。
 自分の人生なんて常に脇役だとか思ってたのに、いつの間にか主人公級になっちゃったよ! なタイプ。
 
 もう1つは典型的な不良。素行が悪くて喧嘩っ早くて、最初はツンケンして一匹狼気取ってたのに、打ち解けてみたら意外と可愛い面があったり面倒見が良かったり。
 
 しかし稔の場合は私が同室な時点で、この設定が死んじゃってるんだ。なんて可哀そうな。
 
 ウチの学校だと典型的不良の同室ってのは難しいよね。
 だって一匹狼ならいるけど、それって唯先輩だし。
 打ち解けても可愛らしい一面とかそんな意外性は1ミリたりとも持ち合わせていないし。
 
 唯先輩と同室かぁ……。想像つかないな、毎日ビクビクしながら暮らすのか?
 いやでも3年生の誰かは、実際に同室として生活してるんだもんな。
 その人尊敬するわ。心から。
 
 そんな事をお風呂に入りながら、ぼうっと考えていた。
 
 
 1時間後。
 
 何故かとあるバーでロイヤルミルクティーを飲んでいる私。
 あーうまうま。
 
「て、なんでやねん!」

 ミルクティーは美味しいけれども!
 落ち着いた大人の雰囲気を纏ったマスターの淹れてくれる紅茶は一級品です。
 
 それはいいんだよ、そこに全く問題は感じていないよ。
 もっと言えば、この場にそぐわない人達が視界に入って来るのも良しとしよう。
 そうじゃなくて、そもそも。
 
「何で元旦の夜に拉致られにゃならんのじゃい!」

 稔がいない元旦、姉も出かけてて私と両親の3人だけで家でまったりしていた。
 お風呂も入ってもう寝る準備も万端だったというのに。
 
 今からそっち行く、という短い短い一方的な内容のメールが入り。
 何だ? と疑問に思いつつも着替えて待機する事10分。
 
 早っ! もう一度あった着信に家の外に出ると同時に拉致された。
 あれは正しく拉致でした。
 気が付いたらバイクの後ろに乗せられて、寒いわ怖いわで絶叫してる間にバーに連れて来られ。
 
 マスターににこやかにミルクティーを差し出されてほっこりして今に至る。
 
「正月にみんな集まる事になったから、ついでに香苗も誘ってやったんじゃん」
「私的には犯罪に巻き込まれたような気分だよ!」

 ソファにだらしなく座ってケタケタ笑う東さんを小突き回す。
 
 コノヤロウ、爽やかイケメン気取りやがって!
 中身が残念無念だって私は知ってんだからな。
 
「にしても、予想通り何の予定もなく家にいたなぁ」
「たまの親子水入らずを満喫してたんだもん。別に誰からも何も誘われず淋しく家に閉じこもってたわけじゃないもん!」
「言ってくれりゃぁ相手してやんのに。なぁ西峨?」

 私の隣でつまらなさそうな顔してノンアルコールカクテルを飲んでる唯先輩がチラリとこちらを見た。
 
 マスターにお酒は駄目! って言われて不貞腐れている様子。
 飲酒は20歳になってから。
 
 ちなみにバイクに私を乗せて疾走したのは、何を隠そうこの男です。
 うう、ショカさんだったらあそこまで怖い思いもせずに済んだものを……。



|


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -