page.1


 
 年の瀬。本日12月30日。
 今日は父と母が帰ってくる日。
 
 今頃悪あがきで年賀状作成を始める姉を後目に私と稔は大掃除をしていた。
 お客さんにさせるのは気が引けたけど、本人がやるって言うから遠慮なしにやってもらう事にした。
 
 やっぱ男手があると違うなぁ。
 毎年姉と2人でやってるから、届かない所とか持ち上げられないものとかあって困ってたんだよね。
 
 あらかた終わった頃を見計らったように両親が帰ってきた。
 タイミング良過ぎだ、本当に見てたんじゃないか?
 
 ダイニングのドアがすごい勢いで開けられた。
 
「ただいまー」
「お帰り、お仕事お疲れ様ー」
「そうね、今年もたくさん働いたわぁ」
 
 うん、働き過ぎだと思うよ。
 
 手を振る母に丁寧にお辞儀をする稔。
 礼儀正しい、いいイケメンだ。
 
「お母さん、ちょっとくらい持ってってくれてもいいでしょう……」

 両手に大荷物を持ってふらふら入って来た男性こそ、何を隠そう堂島家の大黒柱(?)のお父様です。
 疑問形なのは母と共働きで、どっちのがより家計を助けているのか私には解らないから。
 
 背は高いんだけど、頼りないくらいヒョロっとしてるから、一家の頭としての威厳とかないんだよね。
 
 気が弱いわけじゃないんだけど、人がいいというかおっとりしてるというか。
 そして普段は慎重派なのに、私を男子校に入学させたことからも分かる通りたまにとても思い切りがいい。
 
 大抵はちゃっちゃと1人で決めちゃう母は逆に、ここぞという時に二の足を踏んだりするから、父が背中を押してあげたり。
 
 私はうちの両親はとても1122、良い夫婦だと思います。
 
 ちなみに父は家族にもぽろぽろと敬語を使う。
 
「お父さん久しぶり」
「ああ、香苗もお帰り。元気そうで何より。それで学校はどうです?」
「話は後にして、先に稔くんに挨拶したらどうなの」
「え、みのる?」

 父がきょとんとして視線を彷徨わせ、稔のところでカチリと音を立てる様に止まった。
 
 徐々に目を見開いて、それから納得したように無言で2度ほど頷く。
 なんだそのリアクション。
 
「ごめんね、初めまして。方波見稔くんだね」
「え、あ、そうです。初めまして……」
「いやぁビックリしました、話には聞いてたけど本当にカッコいいねぇ」

 しげしげと見てくる父に居心地悪そうに愛想笑いした稔が、ちらりとこっちに目線を送ってきた。
 
 助けろと。なにさ、ウチの父はそんなフォロー入れてあげなきゃいけないような、不思議キャラでも困ったちゃんでもありませんよ。
 
「あ、お父さんに稔の事前情報を与えたのは、ここにいる面々です」
「3人がかりで!?」

 私、姉、母。女3人で姦しい。
 寄ってたかって稔の良い男っぷりを父に吹き込みまくった。
 しかも打ち合わせしてたとかじゃなく、全然バラバラに。
 
 一体何を言われたのかと稔が不安がっているわ、ふふふ、誰も悪い事は言ってないよ多分。
 



|


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -