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「ぐあああ、考えれば考えるほど稔と来栖くんが友達だってのが納得いかんわ! なんで、どうやって稔を誑し込んだの!?」
「何がよ、おれと稔がベストフレンじょ、あ、噛んだ」
「稔いいの!? これ親友なの!? 否定するなら今の内だよ!?」
「落ち着け堂島」

 周りの視線が痛いから。となだめすかされ私は深呼吸と共に椅子に座りなおした。
 
 前に座ってるウタがすごく心配そうに見てくる。周囲っていうか身内の視線さえ痛い。
 
「つかおれ来栖じゃなく沖汐なんすけどー」
「じゃあおっきーな、おっきーって呼んでやんよ!」
「あざーす」

 なんでだー! 訳分らん、もう自分が何を口走ってるか分らん。
 どうにかして来栖くん改め沖汐くんを悔しがらせようとするんだけど、彼が全然悔しんでくれない。
 
「カナが喋るとおっきーが喜んじゃうだけだよ」

 お冷を差し出してくれる依澄は確かに気を遣ってくれてるんだろうけど、心が抉られたのはどうしてだろうね?
 私に喋るなと。黙ってろと、そういう事ですか。
 
「昔っからなー、打てば響くってか、こっちが投げたボール打ち返してくれんのはいいけど、かっ飛ばし過ぎてどこ飛んでくか分かんないとこがなー、色々ちょっかい出したくなんだわぁ」

 いじっめっ子の心理ってやつ!?
 理解不能だわ。私が高盛くんとか三下さんにからかっちゃうのと同じ? とか思っちゃったけど、違う違う。
 
 私は決しておっきーと同じじゃないもの。愛があるもの。
 
「まあ好きな子ほど苛めちゃうっていう、小学生男子にありがちなおちゃめ行為だったんだなぁ」
「ふでばこの中に大量のダンゴ虫入れたり、あれがおちゃめであってたまるかーっ!!」
「あったあった、そんでお前一匹ずつ丸めて机の上に並べだしてさぁ、もうあん時おれ笑い過ぎて窒息しそうだったわ」
「うっそそれ覚えてない、私そんな事やってない」

 あの事件以降しばらくクラスの女子が近寄って来なかったっていう事しか覚えてない。
 どんだけ心の傷になったと思ってんだ、笑いごとで済まされるか。
 
 女の子の輪から外されるってのがどれだけの苦痛か。
 
 そしたら何か? 私の周りがやたら男友達ばっかなのも沖汐くんのせいじゃないか?
 どういうこった、こいつ私の人生に何故こんな絶大な影響を与えてくれてんだ何様のつもり?
 
「結局、香苗と沖汐は仲良い? 悪い? 香苗がやれって言ってくれたらすぐやるけど」

 殺るって言った。絶対今ウタ殺るって言った。
 
「い、いやウタ、私とおっきーは仲良くないけど、ウタは友達なんだよね? そんな簡単に」
「つかそろそろ次行かねぇ? 混んでんだからあんま長居したら店の迷惑じゃんよ。香苗分かる?」
「ウタやっちまえーっ!」

 私が、この私がせっかく助けてやろうとしてんのによくも!
 テーブルに乗り上げて沖汐くんに掴みかかろうとした私を稔と依澄が羽交い絞めにした。
 
 その間にウタの右ストレートがさく裂して沖汐くんノックアウト。
 こいつはこのまま放置してお勘定しよう。
 
 もちろん各自自分の分しかお金は払わない。沖汐くんも目覚めたらきちんと自分で支払うように!
 



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