▼7 ところで、何となくそんな気はしてた。 ファミレスに行く途中も、店内も、そして帰り道も。 あちこちでね、その気配が色濃くあって。 まさかクリスマスって明日ですか? そっこいら中がイルミネーションやらツリーやらで盛り上がってますな! 全然気づかなかった。 やっぱりあの学校って閉鎖的な空間だったんだなぁ。 こういう来るぞ来るぞっていう雰囲気づくりが皆無だから、テレビでもクリスマスキャンペーンとかのCM見てたけど、まだ先の話だとずっと思ってた。 「稔、明日なんだけどさ」 「ああ、明日な、沖汐が遊びに」 「クリスマスに用事があるだと!? リア充爆発しろ!」 「だが俺は死なん!」 強い! 稔最強伝説の幕開けだね!? いやまさか、咄嗟に返しがくるとは思ってなかったわ。 道端で声あげて笑っちゃったじゃないか。 「良く考えたらクリスマスに男二人で遊ぶの? しょっぱいね」 やはりこれは友情から恋に変化する兆しという事か。 そうかぁ、相手は沖汐くんでしたかぁ。 いいんじゃないかな、強い絆が二人にあるのは私も分ってた。 ちょっと気に食わないように思うのは、ただ単に私が沖汐くんに苦手意識を持ってるせいだろう。 私の押しメンはウタだったしね。 まぁ稔本人が選んだ相手なら私はとやかく言うまい。 腐女子は黙って祝福。 「いや、沖汐が堂島と遊びたいってさっきメールが」 「………はぁああ? なんで私!?」 「まあそういう反応だろうと思った」 沖汐くんに対しては珍しく私の反応が悪い事に薄々気づいてたらしい。 嫌いとか、そういうんじゃあないよ? カッコいいよね沖汐くん。 だけど、なんかなぁ。何か引っかかるんだよね彼。 「堂島って沖汐と前から知り合いだったのか?」 「え、全然? 知らないよ」 「あれ、そうなのか……。でもあいつ、お前が女だって知ってるみたいだったけど」 「うええええ!?」 どどど、どおして・・・!? どこでだ? なんでバレた? まさかウタ!? 文化祭であの二人そういや一緒に帰ってたな、その時に根掘り葉掘り尋問されたか!? おおお怖い、なんか徐々に私の高校生活が危険に晒されていってるんだけどどうすれば! これってまさか3学期から急に転校フラグ!? いやまて、ウタも沖汐くんも他校生なんだから大丈夫なはず。 落ち着け落ち着け、もしかしたらただ単に面白がって色々聞きたいってだけかもしれないし。 ていうか沖汐くんならその可能性が高い気がする。 ロクに喋った事ないけど、彼はそういう人な気がする。 稔の友達なんだし、稔から口止めしてもらうってのも出来そうだしね。 駄目ならウタにちょっぴりオイタしてもらって、また入院、かな? てへぺろ 「で、どうする明日。嫌なら断るけど」 「こんな中途半端なまま悶々と年越ししたくないから、明日会って問い質す」 「んな怖がらなくても、それをネタに脅すとか、そんな陰険な事する奴じゃねぇよ」 「うん分かってる。稔の友達だもんね」 この稔の友達なんだから、人を強請るような見下げた下種野郎だとは思ってない。 これも稔の人徳のなせる業だ。 稔に感謝しなさいよね! なんて面と向かっては絶対言えないけれど。 不安だなぁ。せっかくのイブなのに。 きっと君は来ないって展開にならないかしら。 明日なんて来なくていい。今日という日が終わらなければいいのに……。 とか少女マンガ風に言ったら稔に叩かれた。 寒いって言われた。 それはきっと気温のせいだよ! 冬だもんそりゃ寒いよ! よし。ここは気合を入れて明日に備えよう。 無敵の呪文を唱えよう。 私は明日何が何でも乗り切る。沖汐くんなんてへっちゃらだ。 絶対、大丈夫だよ! 前 | 次 戻 |