▼6 「男前ってお前……」 「え、稔ほど友達想いな真っ直ぐでいい男、私の知り合いの中じゃ他にいないよ。イケメンで尚且つ性格男前なんて貴重な財産なんだから」 過去振り返ってみて、何回惚れるって言ったか分らない程ですよ。 美形度で言えばウタとか唯先輩とかいるけど、性格って言っちゃうとね。論外だよね。特に後者。 依澄は可愛いの部類だし。ショカさんはさっきも言ったけどスマート。 男前はやっぱ稔がダントツだ。 というような私の独断と偏見たっぷりの見解を伝えたところ、面白い事になった。 主に稔の顔が。 「みっのるーん?」 「うるさい今は話し掛けるな、食べることに集中しろ」 「じゃあ黙って見つめながら食べていい?」 「見るなドリアに集中しろ」 「ところで何で稔の顔、っ!?」 だん、ぐちゃ ……! ……!? 言葉にならない。目の前で起こった出来事が脳でなかなか処理できない。これがフリーズってやつですか。 私は好きなものは後で食べる派なんです。 トッピングの卵はすぐに乗せたけどまだ手をつけてなかったんです。 ドリアが半分以上に減ったら崩して味変えようと思ってたんです。 なのにまだ、3口しか食べてない状態なのに、稔が箸で卵をぶっ刺してくず…… 「うわぁーん! 稔のばかぁ!」 スプーン持ったまま両手で顔を覆う。 「ひど、こんなのってないよ……! 思い通りにならないからって乱暴、するなんて」 「ら、乱暴……!?」 「稔にとったらどうでもいい事かもしれないけど、でも、私はずっと……ずっと楽しみで」 「わ、分かった、俺が悪かったから! 謝るから泣くなって」 稔が立ち上がっておどおどしてる気配がする。 相変わらず顔を隠している私には見えないんだけど、彼はとても慌てているようだ。 そっと。遠慮がちに稔の手が私の頭に触れた。 ぎこちない仕草で髪を撫でる。 「堂島、ごめんな?」 謝ってもらっても、この胸の動悸は収まりません! だあああ、もう、なんでこの男は、こんな、萌えツボを押さえた、イケメンにしか許されない、行動を、さらっと。 さらさらっと、してしまうんだろうね!? 別の理由で顔を上げられなくなりました。 嘘泣きを隠すためだったのに、真っ赤になった顔を隠すためになりました。 さっきの稔の赤面に負けず劣らずになってるわきっと。 「まだ泣いてる?」 困り果てたと言った様子で問う稔に、黙って首を振る。 「ごめんな、まさか泣くと思ってなくって。ティラミス奢るから、それでいいか?」 「うん!」 ぱっと手を離す。 まだうっすら顔熱いけど、まあ泣いた後だと言えばそう見えなくもないだろう。 そして数分ぶりに見た店内は、何故か騒然としていた。 ガシャン! と厨房の方から食器を盛大に落とすような音がするし、夕食時とあって賑わっているフロアは、お喋りとは違うざわめきに満ちている。 なにごと? あれ何かこっち見られてる? 微妙な視線を感じつつもティラミスまできっちり完食。 会計のときレジをしてくれた男のアルバイターさんが、生温かい眼差しで稔の肩をポンポンと叩いていた。 なんだ、どうした、釣ったのか。お兄さんホイホイしたのか稔? 店員×客も好きだよ。いいと思うよそのシチュエーション。 前 | 次 戻 |