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 はーい、みなさーん、こちら堂島香苗でーす
 ただ今の時刻は12時を少し回ったところ。
 疲れていたのか、3人ともぐっすり眠っておりまーす。
 
 と、寝起きドッキリみたいにひそひそ声でリポート的に言ってみました。
 気分はそんな感じ。
 
 そして私は音を立てないようにムクリと起き上がり、隣にいる稔を覗き込んだ。
 真っ暗過ぎて顔なんて見えません。
 
 別に寝顔をじっくり拝見したくてこんな事をしているわけではありません。
 あのですね、お風呂に入りたいんですよね。
 
 みんなは晩ご飯食べた後、順に入ってったんだけど、私が共同浴場に一緒に入るわけにもいかない。
 怪我をしている事を理由に辞退した。
 
 辞退するいい理由が出来たこと。なんてほくそ笑んだのも束の間、泥だらけになった身体は一応タオルで拭いたんだけど、ね。
 気持ち悪い。お風呂入って無いと思うと気になって眠れない。
 
 女性の先生方からは、来れそうなら遅い時間でもいいから来なさいとお許しは貰っている。
 やっぱこういう時女の味方は心強いやね。
 男はこの辺の気配りが出来なくていけない。
 
 でもそのお風呂がある建物は、このログハウスからだと結構距離がある。
 月明かりだけが頼りの、外灯のない中を一人で行けるわけがない。
 しかも恐怖に拍車をかけるように、時芽のやろう、さっきまで怪談話なんてやりやがったんですよ! どうなの、有り得ないよ!
 
 怯える私を見て内心爆笑してたんだぜあの鬼畜め。
 
 そんなわけで、稔についてきてもらおうという魂胆なのです。ついでにトイレも行きたいです。
 
 基と時芽を起こさないように、稔の耳に顔を寄せて小さい声で呼ぶ。
 
「稔、稔起きて」

 肩を揺すると反応があった。よし、起きそう。
 もう一息。
 
「みのる……」
「!! ……っ!」

 身体が硬直して息を思い切り吸い込む気配があった。
 慌てて稔の顔があるだろう場所に両手をあてて口を塞いだ。
 
 あっぶねぇ! ここで大きい声出されたら元も子もない。
 
 稔は私の手を退けると起き上がった。
 
「お前、ビックリするだろうが……」
「ごめん。あの、ちょっと外出たいから付き添ってほしくって」
「トイレ?」
「まあうん、それもだけど、お風呂」

 身体を支える様についていた片手がガクッと折れて、稔が布団に倒れ込みそうになった。
 
 うお! まだ半分寝てる!?
 
 オロオロしてるのが気配で分かったのか、稔は深いため息を吐いた後に「分かった……」と低い声で了承してくれた。
 



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