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 じゃりじゃりと足音をさせながら夜道を歩く。
 お風呂は先生達の部屋のある建物に併設されているから、最初に先生達に断ってから入らなきゃだな。
 
 しかし、こんな暗い中を二人で歩いてると夏を思い出すなぁ。
 稔が唯先輩達のファーストコンタクトを取った日も遅い時間に帰ったんだった。
 
 あれからもう3か月。ワンクール。アニメ1期が終わる日にちが過ぎた。
 
「月日が経つのは早いなぁ」
「おっさんか」

 眠そうに頭をガシガシ掻きながら稔が適当にツッコミを入れる。
 
「なぁ、堂島が風呂入ってる間、俺どうすりゃいいんだ?」
「先生達んとこいればいいんじゃない?」
「はぁ!? ないだろ! それはないだろ!」

 だよねぇ。私だって先生達と寝ろって言われて全力で拒否したもの。

「じゃあお風呂の前の廊下で待ってる?」
「……秋月の作り話思い出すから却下」

 素直に怪談っていいなよ。変なところでプライド高いな稔ってば。
 
 しかし、ならどうすればいいんだ。先に帰ってもらうのはそれこそ却下だ。
 
「お風呂」
「あ?」
「一緒に入る?」

 これなら私も稔も怖くないよね! なんて無邪気に言ってみる。
 予想通りあんぐりと口を開けて固まった稔に笑う。
 爆笑したいけど大きい声出したら、近くのログハウスの子等に聞こえちゃうから我慢。
 
 立ち止まった稔を見上げると、彼は息を吸い込んだところだった。
 なに?
 
「んな不埒な事言うのはこの口か、ああん!?」
「ふらひへ!」

 不埒て! って言いたかったのに稔に両方のほっぺた引っ張られてるからちゃんと喋れない。
 
 いたい、いたい!
 
「お前なぁ、いっつも言ってるけどちょっとは女だって危機感持てよ……」
「持ってるよ。持ってるから基達じゃなくて稔についてきてもらったんだって」
「それは、うん、でもそうじゃなく」

 なにが? 何の話だっけ?
 
 女だってバレないように気をつけろって話じゃなかったの?
 
 会話が噛みあってない事に気付いた稔はまたも溜め息を吐いた。
 なんだい諦めの境地みたいな遠い目してからに。
 
「平良ならどうしたんだろうな……」
「依澄?」

 稔の呟きは私に対するものじゃなくて独り言みたいなものだったらしく、聞き返したら微妙な顔された。
 地味にショック。
 
 てかどうして依澄が出てくるのか。
 ああ、私が女だと知ってる人繋がりか?
 
「あの子なら先生達の宴会に自然と溶け込んで、何の違和感もなくお酌とかしちゃうよ」
「ああ……」

 想像がついたらしく乾いた笑みを漏らす。
 依澄は学年トップで良い子だから先生方の覚えもめでたい。
 かなり可愛がられているのだ。
 
 わいわい一緒に盛り上がっちゃうだろう。羨ましい順応能力だわ。
 
「ならいいわ」
「なにがいいの?」

 ねぇさっきから稔と私って会話になってないよね?
 一方通行だよね、アクセラレーターさんですか?
 
 じゃあ私は打ち止め?
 
「貴方が何を考えているのか、私には解らないわ……!」

 と、香苗は香苗は情感たっぷりに呟いた。
 
 そして間髪入れずに「馬鹿だろ」とばっさり切られた。
 



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