やっと私が気づいた事に苦笑しつつ「大丈夫か?」と尋ねてきた。

「ドンウォーリーですよー」

 叩かれました。
 全然痛くないんだけど。べし、とソフトタッチで。
 
 ほっとしたように笑ってくれたから良かった。
 
 やっぱりかなり心配させちゃってたか。
 ごめんね稔。
 
「怪我は? 捻挫とか骨……」
「あー、擦り傷とか痣とかはいっぱいありそうだけど、今のところそんな……歩けるみたいだし」
「あの高さ落ちてかすり傷って、お前どこのマンガの主人公だよ」
「ふはは! これからは私を不死身の香苗と呼んでくれたまえ!」
「字数多いから却下」

 毎回二つ名で呼んでたら面倒くさくてかなわないよね!
 堂島香苗と書いてルビに不死身の香苗とふっておいてもらおうかな。
 いやずっとフルネームもやだなぁ。
 
「……ごめん」

 俯いてぼそりと謝る稔にきょとんとする。
 
「え、不死身の香苗って呼んでくれるの」
「そっちじゃねぇよ!」
「じゃあどっち? なんか稔が謝るような事あったっけ?」

 むしろ私が稔に誠心誠意込めて土下座しなきゃいけないような気もするけど、したくないから気のせいって事でうやむやにする。
 
「堂島が落ちるとき、俺がちゃんと手、掴んでたら」
「そんな事を気に病んでいらっしゃったのあなた!?」

 どんだけ自分に厳しく他人に甘いの!?
 あんなもん言ったら悪いけど、100%高盛くんのせいみたいなもんだからね!?
 稔が罪悪感感じるような隙は1%も含まれてないからね!?
 
「そんな事ってお前」
「だってそれを言ったら私だってケインコスギみたいに這い上がれなくてごめんって言わなきゃいけなくなるじゃん!」
「まぁそれに近い事は叫んでたな」
「ええええ!?」

 おおお、錯乱状態になって脳内が口から駄々洩れになってたのか!
 他に余計な事言わなかっただろうか、聞きたいけど怖くて聞けない!
 
「いやいやまぁ、私の事はちょっと置いといて。かたミンのそういうとこ、カッコいいと思うけどあんま良くないよぅ? 敵に付け込まれちゃうんだから」
「敵って誰だよ」
「稔の貞操を狙う紳士淑女の皆様」
「紳士淑女はんなことしない。てか紳士!?」

 おおっと危ない危ない。またも脳内が駄々洩れ警報発令しちゃったわ。
 ふふふ、まぁまぁ、と笑ってごまかす。
 
 誤魔化されてね稔! お願いだからそれ以上ツッコまないで!
 
「……別に俺だって誰にでもこんな風にしてるわけじゃない」

 よっしゃ! 話題が別の方向に移った! と内心ガッツポーズしてた私はなんか内容を取りこぼしてしまった。
 
 今また稔さんったら友情がキラリ発言してなかった?
 どうしたの? 甲子園目指す青春真っ盛りボーイ? みたいな胸きゅん発言してなかった?
 
 もっかい言って下さい、という念を込めて稔を見つめてたんだけど、「見んな!」と顔を手で覆われてしまった。
 
 稔の手で、私の顔を。
 
 なんでやねん!

 おかげで「ふべし」って変な声だしちゃったじゃないか!
 



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