神社の裏手が結構広い林になってて、真夏の炎天下でもじめっと暗く、ちょっと寒い。
 何故そんな場所に、と言われれば依澄が興味を引かれてホイホイ中入ってっちゃったから、仕方なく私もついてったんだ。
 
 その場所が怖かったのなんのって。
 依澄が「あれなぁに?」って指さした先に五寸釘が打たれたわら人形があって慌てて手を下ろさせたり。
 
 「さっき誰か通らなかった?」とか、誰もいるはずないのに笑顔で聞いてきたり。
 
 人間サイズの、でも明らかに動物っぽい足跡見つけてみたり。
 
 あれは今思えば発狂してもおかしくないレベルのものばかりだった。
 近所に未知の世界が広がってた。
 
 途中で二人共疲れ果てて動けなくなって、怖いし淋しいし、お姉ちゃん心配してるかもって思ったら不安になって来て、泣きそうになる私を依澄が懸命に慰めてくれた。
 
 迷子になったのも怖いのも泣きそうなのも、全部依澄のせいっちゃそうなんだけど。
 寄り掛かれるのはやっぱ依澄しかいなくて。
 
 二人で手繋いで木にもたれて座って、気を紛らわせるために色々話した。
 その時に依澄のおうちの事情とか知った気がする。
 
 最終的には夜になる直前、姉の友人に発見されて無事に家に帰れた。
 
 あの後、姉に散々、逢魔が時がどうだとか、呪いがとかあの雑木林にまつわるあれやこれやを吹き込まれ。
 
 絶対私の怖くそはこれが原因だと思うんだ!
 幽霊とか未だに怖いのお姉ちゃんのせいだと思うんだ!
 
 あー幽霊って言っちゃった!
 
 ガサササッ
 
「ぎゃーっ!」

 なんちゅータイミングで鳴りやがる木だ!
 
 不自然に揺れた草木をかき分けて、人が現れた。
 
 香苗は先制攻撃を受けた。
 依澄のターン
 
「て、依澄!?」
「カナ!!」

 私の声に一瞬目を見開いて、すぐに駆け寄ってきた。
 私も依澄の方に行きたいけどさっきので足腰に力が入らない。
 
 おお安心した途端力ぬけるって本当なんだ。
 
「カナ」

 私の前にしゃがんだ依澄は、そのままぎゅうと私を抱きしめた。
 あったかい。息切れてる。慌てて探しに来てくれたんだな。
 
「大丈夫、もう大丈夫だよ。怖くないから」

 ああもう。小学生の時と同じこと言ってらぁ。
 この子は私がほっとできる言葉を知ってるんだ。
 
 依澄に言ってもらうともう大丈夫だって思えるのは、一種の暗示だろうか。
 
 いっつもポヤポヤのくせに、まったく。
 
 ふふ、と笑ってしまった。
 依澄の背中を2回軽く叩く。
 すると心得たもんで、ぱっと身体が離れた。
 
「うん、大丈夫。依澄来てくれたからね」

 そう言えば、依澄もふんわりマシュマロみたいな笑みを浮かべた。
 マイナス思考に憑りつかれて荒んだ心に沁みわたるわぁ。
 
 漸く落ち着いて立ち上がる。
 
「あっれ稔!? 稔も来てくれてたの!? うわぁすごい嬉しい!」

 少し後ろに稔もいた。
 えええ、二人して探してくれてたんだ!?
 
 なんという萌え、じゃない友情に篤い子等だ!



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