▼3 ミツカラナイナー、みのるとそのともだちいないなー ふふふ、私にはどこを探しても見えないわ。ええ、そうですとも。目の前で稔&友達VSウタになってるとか、ばんなそかな! ウタだけでも稔だけでも目立つのに、なんなの何でそんな不必要な夢の共演しちゃうの。 稔を見つけた瞬間、石に躓いて盛大にすっ転んだ私をロマンスグレーの紳士おじ様が助け起こしてくれて、ついうっかりそっちに気が逸れてる間に、ものの数秒の間に校庭がまたもバトルフィールドになってたという。 ウタは野良犬よろしく牙向いて威嚇しまくってるし、明るすぎる茶髪にピアスっていう如何にもな男の子がウタにメンチ切ってる。 ここからだと稔は横顔なんだけど、そんな二人に挟まれて途轍もなくテンパっているのが分かる。 こ、恋のトライアングル……! とか言ったらものすごく稔に怒られそうだね。 ふむ、しかし覚えておいて後で内海くんと論じよう。 「俺の為に争うのはやめてくれ!」とか言ってくんないかなぁ。 「おもしれぇ事になってんじゃねぇか」 「まったくですよねぇー」 ずしりと身体に重みが加わった。 左肩から私のじゃない腕がだらりと伸びる。 ん? 「ゆ、唯先輩!?」 「あ?」 いきなり話し掛けられて普通に返事しちゃったよ! 神出鬼没だな、やめてよ心臓に悪いんだから! ときめくとかじゃなく、本当に息の根止まりそうって意味で。 先輩は一瞬睨むように私を見下ろしたけど、すぐにウタ達の方に目をやった。 唯先輩呼び、若干気に入らないけど許してくれたようです。 名前呼ぶのも命がけ。 「ていうかウタ探してくれてたんじゃなかったんですか。何で野放しなんですか」 「見つけたと思ったら先にお前の連れが絡まれたんだよ」 「稔も結構なトラブルメーカーですからね……」 板宿先輩を引っかけたのを皮切りに、高盛くんが釣れて、おまけに生徒会との面識が取れ。 オマケに夏休みは自ら進んで不良さんに喧嘩売るわ。 こうやって言うと、とんでもなく王道主人公らしいのにね。 次々イケメンさんやら愉快な仲間達とお近づきになってるのに、何故か顔見知り止まりなんだよね。 納得がいかんわ。 「つーか野放しにしてんのは俺じゃなくてお前だろ」 「私は」 「経緯はどうでも、あれがああなったのは主人のお前が居なくなったからだ。首輪を外すのもキツく締め直すのも自由だが、そろそろ飼い主として責任取れ」 確かにウタが不良になったのも北チームにいるのも私のせいだ。 そして責任を北さんに押し付けて逃げたつもりだった。 でもウタがずっと北にいる原因が私にあるのなら。 ウタが不安定なのを私が何とか出来るなら、それは私が責任を取らなきゃいけないんだろう。 前 | 次 戻 |