「確か魔女っこメグちゃんは全少女の憧れだとかそんな話だったっけ」
「全然違う」
 
 冷静にツッコまれてしまいました。
 
 えー? 違うっけ?
 でも男の子が一度は戦隊ものに憧れを抱くように、女の子も好きだよね変身もの。
 
「つーか秋月が目撃したのアイツだったのか。何でいんだよ、しかも何日も前から」
「んー? 生徒だからでしょ?」
「……違うよ。ここの生徒じゃない」

 現実離れした空気を纏った子。
 ここの生徒の事だろうと決めつけていたから全然結びつかなかった。
 当然だ、彼はここから小一時間ほどかかるところに住んでて、地元の高校に通ってるんだから。
 
「そのはずなのに、どうしてここにいるのかなぁ高鳥歌生くんは!」

 ビックリしたわ!!
 そりゃぁ女の子達が騒ぐはずだ。あんな良くも悪くも目立つ子がいたら。
 
 美しいプラチナブロンドに日本人離れした整った顔。
 吸い込まれるようなブルーアイズ。
 まるで絵にかいたような王子様の容姿。
 
 中身が残念な犬だなんて誰も思わないだろう。
 
「どこにいたのかは何となく想像つくけど……」

 目的が全く思い当たらない。
 夏以降、たまに日記のようなメールのやり取りをしているけれど、こんなのは聞いてない。
 教えてもらっていない。
 
 私に隠さなきゃいけない事?
 
 ウタのくせに生意気だ。
 
「あれぇカナくん知り合い?」
「ああうん、まぁそんなとこ。全然会いたくなかった知り合い」

 万が一ウタに私がここにいるってバレたら……。
 
 怖すぎる。即行でその場で私が女だって暴露しそうだウタならやりかねない。
 上手くそれを阻止したとして、ヤツの事だ。
 自分もここに通うとか言い出しそう。
 
 ダメダメダメ!
 私の慎ましい萌え萌え学園生活終了のお知らせ、になってしまう!
 
「へぇ珍しいねぇ、カナくんがそんな風に言うなんて」

 そういやウタだけだなぁ。
 ショカさんも東さんも、思い出したら会いたくなる。
 きっと彼らならウカハプ(ウッカリハプニングの略)でも、今日この学校に来てるっていうならちょっぴり嬉しい。
 
 でもウタは。ウタだけは特別。
 
「おーお帰りカナくんかたミー」
「基こそどこ行ってたの」
「ちょっとそこの廊下の角で妖精さんが消えるの待ってた」
「どうしたの基、豆腐の角に頭ぶつけて幻覚見えるようになっちゃったの? 何それオレも見たい」

 銀河の妖精さんとか特に見たい。
 舐め回すように。
 彼女の歌をいつまでも聞いていたい。
 
「つまり狂犬が怖くて遠くに逃げて身を顰めてたんだな」
「その通りぃ」

 ふへへ、と笑ってる。
 基って本当ゆるい。
 
「いかにも喧嘩っ早い顔しといてこのヘタレだもんなぁオリリンはぁ」
「バカ野郎! 不良に見られやすいからこそ、目つけられる前に逃げんのよぉ」

 正論だ。基の言ってる事は正しい。
 正しいのだけれど、そうやってフラグ回避してるといつまで経っても攻めと邂逅出来ないでしょうが!
 



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